柱稽古編ではまるで別人?『鬼滅の刃』第一印象が最悪すぎた「柱たちの人間性」

(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

吾峠呼世晴氏の同名漫画を原作としたアニメ『鬼滅の刃 柱稽古編』の最終回となる第八話が6月30日に放送された。「柱稽古編」は敵である鬼との戦闘をメインにしていない代わりに、これまでは目立たなかった柱の登場シーンが多く、柱による稽古を通して彼らの関係性や考え方を知ることができる貴重なシリーズとなった。

もともと物語開始時には9人いた、屈指の実力を持つ鬼殺隊の柱たち。彼らがアニメで初めて一堂に会したのは、2019年放送の第1シリーズ「竈門炭治郎 立志編」第二十二話「お館様」で描かれた柱合裁判と、その後に開かれた柱合会議でのことだ。

柱合会議とは、鬼殺隊の柱たちが当主であるお館様のもとに集まって行う会議のこと。このときは柱合会議の前に、竈門炭治郎が鬼である妹・禰󠄀豆子を連れていることが隊律違反であるため、その処遇について裁判をしようと各々から糾弾されている。

那田蜘蛛山での戦いを終えて目を覚ましたばかりの炭治郎からすると、急に知らない人ばかりの中に放り込まれることとなる。周りにいるのが誰なのかもわからないまま口々に責め立てられ、禰󠄀豆子もそばにいないのだから混乱しただろう。

この時点ではまだ詳細が明らかにされていなかった柱たちが、「裁判」と称して炭治郎を口々に責める様子は、視聴者からしてもついていけない展開だった。

■煉獄も宇髄も初登場時は残酷な物言い

「柱稽古編」まで見ると、全員いい人たちばかりだとわかる柱たちだが、改めてこの初めての柱合裁判シーンを見てみると、つい人間性に問題があるのではないかと感じてしまうほど、誰もがヤバイ発言ばかりをしている。

たとえば、「無限列車編」で炭治郎のみならず世界中のファンの心に炎を灯し、鬼殺隊としての生き方を説いて散った炎柱・煉獄杏寿郎のセリフ。

鬼殺隊の本部に集合した際には裁判の説明をしている蟲柱の胡蝶しのぶを遮り、炭治郎と禰󠄀豆子について、「裁判の必要などないだろう! 鬼を庇うなど明らかな隊律違反! 我らのみで対処可能! 鬼もろとも斬首する!」と禰󠄀豆子だけでなく炭治郎も殺してしまうべきだと断言している。

その瞳はらんらんと輝くも瞳孔が開き切っており、声が大きく快活なところが逆に怖い。

続いてセリフを発したのは「遊郭編」で炭治郎らを頼もしく支え、片目と片腕を失いながらも上弦の陸の鬼を倒した派手好きの音柱・宇髄天元。

炭治郎が目を覚ましたときには「地味な野郎だな」と一蹴しており、煉獄の「斬首」発言に続いて「ならば俺が派手に首を斬ってやろう 誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ もう派手派手だ」とあまりにも物騒な発言をしている。

■改めて読み返すとギャップを感じる柱たちの言動

この頃は、すでに作中に登場している水柱・冨岡義勇以外の柱にはほぼ一言しかセリフがなく、キャラの詳細を掴むにはあまりに短い登場シーンだった。

次に発言したのは恋柱・甘露寺蜜瑠。「えぇぇ… こんな可愛い子を殺してしまうなんて 胸が痛むわ 苦しいわ」とほおを赤らめ、なぜかこの後も全ての人にキュンキュンと胸をときめかせていた。

甘露寺は実は天真爛漫なキャラクターだが、この時点では恥ずかしがり屋で内気なキャラのようにも思える。

岩柱の悲鳴嶼行冥は「あぁ… なんというみすぼらしい子供だ 可哀想に 生まれて来たこと自体が可哀想だ」と涙を流して手を合わせている。その見た目は巨体に白目も相まって、とにかく怖い。

霞柱の時透無一郎は皆が口々に炭治郎への処遇を発言する中、ずっとボーッと空を見上げていた。「刀鍛冶の里編」で明らかになるが、このときの彼は記憶喪失状態であり、思考も頭に霞がかかったようになっていたのだ。

悲鳴嶼、煉獄、宇髄の3人の中で「殺してやろう」と意見が一致してしまう中、木の上にいた蛇柱・伊黒小芭内は冨岡に対してネチネチと嫌味を言っている。

蟲柱の胡蝶は炭治郎に優しく声をかけ、ことの顛末を説明させようとしていた。鎮痛薬入りの水を与えてやるなど、このときから優しさは健在のようだ。

禰󠄀豆子の入った箱を持って現れた風柱・不死川実弥は特に凶暴で、箱の外から禰󠄀豆子を刃で貫くという残虐な行動まで。

小芭内、蜜璃、不死川の3人に関しては、「柱稽古編」を終えた今もそれほどギャップがないだろう。しかしこの時点の柱たちは見た目もそれぞれ個性的で、ヤバイ人たちばかりの異色集団に思える。「柱稽古編」の柱合会議ではみなピシッと正座で集まって落ち着いて話をしているのが不思議なくらいだ。

逆に、冨岡は一悶着はありつつも初登場時点で禰󠄀豆子を殺さず、炭治郎に鱗滝左近次を紹介するなど初登場の印象はかなり良かった。しかし「柱稽古編」まで見ていると、普段からあまりに言葉が足りておらず、周りの人を意図せず怒らせたりと、コミュニケーション力に問題がありすぎなことがわかる。クールという言葉ではとてもカバーできない。

話の展開が進んでいくにつれて、冨岡と他の柱の印象をそれぞれ真逆に感じるのはなかなかに興味深いことかもしれない。

柱の性格が初めての柱合会議のままだったら、ここまでそれぞれのキャラクターに人気は出なかったように思う。それもひとえに炭治郎の頑張りがあったためだろう。

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