なぜ富士テストで『セーフティカー訓練』が実施されたのか。周回遅れの送り出しは「状況に応じて導入の可能性あり」

 富士スピードウェイで行われた、今季2回目となるスーパーフォーミュラの公式テスト。1日目の7月7日、セッション1が終わった後に、同カテゴリーでは珍しくセーフティカー訓練が行われた。これは、F1や他のカテゴリーでも実施されている“周回遅れの車両を送り出しする手順”を確認するためのものだった。

 これまでSC先導中に周回遅れを送り出す場面はなかったが、実は2年ほど前に全日本スーパーフォーミュラ選手権の統一規則の第33条(セーフティカー)に項目が追加されていた。

※以下、2024年全日本スーパーフォーミュラ選手権統一規則より抜粋※第33条 セーフティカー3. 競技長がそうすることが安全であると判断した場合、先頭車両に周回遅れにされていたすべての車両は、先頭車両と同一周回にいる車両及びセーフティカーを 追い越すことが求められる。この運用を採用する場合は、ブリーフィング等で詳細手順を周知徹底すること。

 この項目が追加されることになったのは、2021年の第6戦もてぎの決勝レースが発端だった。ウエットからドライに変わるという難しいコンディションのなか、レース中盤に起きたアクシデントでセーフティカーが導入された。この時にピットストップの関係で大湯都史樹が周回遅れとなってトップと2番手の間に挟まる形で再開を迎えた。

 当然、周回遅れの車両に対して青旗が振られることになるため、大湯はそれに対応するために、2コーナーから3コーナーまでの直線区間で後続を前に行かせるべくラインを譲ってペースを落としたが、その際に後続で混乱が発生して山本尚貴と平川亮が接触するアクシデントが発生した。

 実は、この時点で周回遅れの車両を送り出すという規定がなかったことと、F1などではすでに導入されているルールということもあり、翌年から送り出しが出来るという規定が加えられた。

 実際にはこれまで、セーフティカー先導中に送り出し対応が行われる機会がなかったが、スーパーフォーミュラのレースディレクターを務める宮沢紀夫氏によると、第3戦SUGOの金曜日に行われたドライバーブリーフィングで、ドライバー側から「SUGOはコースが短いので、青旗が出たり周回遅れの車両が出る可能性もある。そういったルールがあるのであれば、実施する方が良いのではないか」という提案があったという。

 ただ、導入について積極的な意見が出た一方で、ルールとしては存在するものの前例がないこともあって詳細手順が決まっていない状況を危惧する声もあがったという。そこで手順をドライバーやレースコントロールサイドが確認するために、この富士テストでSC訓練が行われたのだ。

 手順としては、対象車両をコール(今回はタイミングモニター上にテロップで表示)をして、指定したタイミングで行うことになるという。なお、送り出しをする場所については「各サーキットで適する場所で送り出しをする形になると思いますが、そういう場合は(事前に)ドライバーと合意して『実施する場合はどの区間でやる』と決めます」と宮沢レースディレクター。ちなみにSUGOの場合はバックストレートが実施箇所になるという。

 今回に関してはパナソニックオートモーティブ(最終)コーナーからウィービングを禁止、全車がアウト側に1列で隊列を組む。競技長からの指示で対象車両がコースのイン側へと移動して隊列から外れ、安全が確認されたところで対象車両が加速して送り出しが行われる。今回のSC訓練ではセッション1の下位3台が対象車両となり、事前に取り決めた手順に従って確認作業が行われた。

 ただ、宮沢レースディレクターが強調していたのは、送り出しは必ず行われるわけではない、という点だ。

「これはマスト(必ず実行しなければいけない)ルールではないです。条件が整って『(送り出しを)やった方が良い』という判断をすれば実行するということになります。たとえば、残り周回数的にこれをやることによってレースが再開できないまま終わることになったら意味がないので、そこはケース・バイ・ケースで判断します。『もし実行した場合の手順はこうなりますよ』ということを、今回のテストでやりました」

 また、このルールが周回遅れになって勝負権を失った車両を同一周回に戻すための“救済措置”になるようなことはあってはならず、あくまでもレース再開直後の密集状態における青旗対応による混乱を避けることが最大の目的であることも、宮沢氏は強調した。

富士公式テストで行われたセーフティカー訓練の様子

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