車いすテニスの上地結衣、悲願のウインブルドン初優勝に向け「理想に少しでも近付けるようなプレーをする」と意気込み!<SMASH>

現在後半戦を迎えているテニス四大大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン)は、7月9日(火)から車いす部門が開幕する。女子シングルスでは、第2シードの上地結衣(世界ランキング2位)が悲願のウインブルドン初優勝を狙う。また男子シングルスでは、先月の全仏オープンで四大大会4勝目をマークした18歳の小田凱人(同1位)が第1シードで登場し、ウインブルドン連覇へと挑む。

連日現地から熱戦の模様を生中継している『WOWOW』では、上地と小田に単独インタビューを実施。ここでは本日14番コートの第4試合でジュ・ジェンジェン(中国)と対戦する上地の声を紹介しよう。

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Q:前哨戦の大会で、3年ぶりにディーデ・デフロート(オランダ)選手に勝利しました。どのような点が良かったのでしょうか?

上地:前哨戦のローハンプトンの大会は、芝がすごく残っていて、ウインブルドンとは全然違った印象でした。おそらくどの選手も苦戦していたのではないかなと思います。私を含めてですけど、初戦から3セットのマッチが多くて、デフロート選手自身も珍しくもつれるような試合が多いなという印象でした。

試合の内容としては、自分が終始攻めることができ、クレーコートで戦った最後の対戦から改善して、色々と試しながらプレーができました。それが結果的に彼女にプレッシャーを与えられたのかなと思います。3年ぶりというのも、何かの記事で自分も見て、「そんなに前だったんだな」という風に思いました。実感がないというか、勝った時も、変な感覚でしたね。
Q:色々これまで取り組んできたことがあったと思うのですが、それがどのように勝利につながったのでしょうか?

上地:(デフロート選手)と対戦するには、守りに入っては絶対ダメだと思います。でも「ここのポイントを取りたい」と思った時に、自分が安心できるように打った1本のショットが彼女に対しては、アタックできるチャンスになってしまう。ただ今回は芝という特性もあって、つなぐボールを1本打つだけで、一発で良くも悪くも状況が変わってしまいます。気の抜けない状態というか、ある意味しっかりと集中した状態を続けることができ、そういうところが良かったです。

Q:今回久しぶりに勝利したことで、今後の対応を含めて変わりそうなことはありますか?

上地:自分の気持ちとしては、ここから続けて、自信を持っていきたいです。(試合)内容自体も100%納得しているかというとそうではなく、それ以前の準決勝や準々決勝の試合でも、すごく難しいなと感じながらプレーしている場面もありました。もっと(試合)内容を良くしていくことはもちろんですが、「勝ち」という結果はしっかりと受け止めて、素直に喜びたいです。

自分でもこういったプレーができると思って、このあともプレーしたいなと思います。それがどんどん積み重なっていけば、自分の感覚としても、試合の中で良い流れを作っていけるのではないかと思います。先週の1つの勝利で何かがガラッと変わるわけではないですが、一つのきっかけとしてもっと今自分が取り組んでいること自体に自分が自信を持てるようになっていけたらなと思います。Q:全仏では思わぬ早い段階での敗退となってしまいましたが、そこから今に至るまでどのように立て直しを行ったのですか?

上地:現時点も、修正の連続で、必ずしもフランス遠征から脱出したというか、今すごくコンディション良くプレーしているわけではないです。テニスだけではなく、コンディショニングや車いすの部分でも日々試行錯誤しています。

何か1つではなくて、自分の身体と心と一緒に戦ってくれている用具が嚙み合ってはじめて、自分の思う通りにプレーできているという状態になると思います。まだそこまで正直達してはいないですけど、携わってくださっているたくさんの方々と一緒に話し合いをしながら、色々なアプローチをしながら、ああでもないこうでもないと言いながら、取り組んでいる最中ですね。
Q:クレーから芝に変わることで、何かアジャストするために変えることはありますか?

上地:クレーもハードと比べると足元を取られたりとか、イレギュラーなことが起こるサーフェスですけど、まだ芝と比べると車いすの惰性というものが使えると思います。自分が漕いだもの以上に車いすが走ってくれるという感覚は、一番はハード、次はクレーにあると思います。(一方で)この芝というのは、先週のローハンプトンもそうですけど、自分が漕いだ分しか進まない印象です。

自分はパワー勝負ではなく、(車いすの)惰性を使い、身体の回旋でボールをうまく飛ばしているタイプだと思うので、不利とは言わないですが、戦い方を変えなければならないとはいつも思っています。その上で、直線的なショット、ドロップ、バリエーションのあるショットを打って相手に読ませないところは重要かなと思って戦っています。

Q:今回の目標、意気込みをお願いします。

上地:先週の大会は先週の大会のものとして良かったなと思いますけど、今週はやっぱりサーフェスも違いますし、少し違った感覚になると思います。しっかりとその感覚をフィードバックとして捉えて、しっかり調整して、まずは決勝戦まで行く。このウインブルドンは決勝戦に行けた回数自体がまだまだ少ないので、決勝戦に行ってデフロート選手と対戦する。そこでもう一度、積極的にプレーをして、自分の理想に少しでも近付けるようなプレーで、優勝するのが自分の今回の目標かなと思います。

インタビュー提供●WOWOW
構成●スマッシュ編集部

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