梅雨の晴れ間の「北アルプス・唐松岳」 剱岳&五竜岳の残雪「絶景レポ」 八方アルペンライン利用で1泊登山

梅雨時の雲沸く剱岳(撮影:鶴岡 亜矢子)

「梅雨どきにも北アルプスに登りたい」と思った時、筆者の行く先は長野県の「唐松岳(からまつだけ・標高2,696m)だ。八方アルペンラインを利用し、標高1,830mまで一気に上り、コースタイム約3時間で唐松岳頂上山荘へ到着する。歩く時間が短いため、梅雨の晴れ間を狙いやすいのがポイントだ。

■八方アルペンライン利用で、楽々「八方池山荘」へ

筆者が訪れたのは、ある年の6月下旬。唐松岳頂上山荘が営業を開始した日だった。曇りであったが、天気予報は曇りのち晴れの予想。どんな景色が待っているのかワクワクする。

ゴンドラとリフトを乗り継いで八方池山荘に到着し、八方池までの約1時間半、整備された登山道を歩く。チラチラと白馬三山が見え、梅雨前線が南へ蛇行する予報の通りとなった

ダケカンバと白馬三山

八方池を過ぎると、しばらくしてダケカンバの森に差し掛かる。ちょうど新緑の見ごろを迎えており、きれいな新緑を眺めていると、雲が切れ青空が見えた。

梅雨で天気が心配ではあったが、思い切って東京から白馬を訪れてよかった。遠くに見える白馬の山並みには雪が残っていた。

■ライチョウのケンカ中に通りかかる

高度を上げていくと、たくさんの雪が。雪面からの冷気を含んでか、天然のクーラーのように一帯を吹き抜ける風がとても涼しく、生き返った気分になる。

尾根が少しずつ細くなってきたハイマツ帯で、砂埃と鳥の鳴き声がする。確認すると、ライチョウのケンカではないか。近づいても逃げない。縄張り争いだったのだろうか。白い冬毛から夏毛に変わりだしていた。

標高が上がってくると高度感が増し、まだ雪が残る五竜岳があまりに美しく、目が離せなくなった。午後3時の柔らかい日の光と、中腹にかかった雲がよいアクセントになり、しばし足を止めて撮影タイムとなった。

■山荘からの星と剱岳絶景

唐松岳へ15分という便利な立地に建つ唐松岳頂上山荘は室内が広く、きれいなイメージだが、筆者の一番の推しポイントは、「簡易水洗トイレ」。標高2,600m付近の山小屋で水洗とは、登山者にとっては大変ありがたい。しかも食堂からは唐松岳、剱岳、五竜岳などたくさんの山々を見渡すことができる。

刻々と変わりゆく夕暮れの景色を眺めながら、夕食をいただく。今朝はまだ東京にいたのに、今は北アルプスとは信じがたい。なんと贅沢な時間だろう。一日晴れたり曇ったりと、忙しい天気であったが明日はどうだろうか。

夜が更けてきたあたりで外に出ると、雲の間にたいそうきれいな星空を見つけた。いつもはフィルムカメラだが、今回はコンパクトデジカメ。それでもきれいな星空と唐松岳のコラボレーションをしっかり写真に収めることができた。

そして翌朝。ピンク色に染まる朝焼けの中、少しずつ剱岳に朝日があたりだした。

目の前には、息を呑むほど美しい幻想的な光景。筆者は無言でしばらくこの美しい山々を堪能した。

昨日の五竜岳といい、昨夜の天の川といい、きっと日頃の行いがよかったのだろう。最高の気分の中、朝食を食べて、荷物を小屋に置いて唐松岳へ向かった。

夏の営業開始したばかりの唐松岳頂上山荘に泊まり、梅雨の中の晴れ間を見事ゲットできた。梅雨前線の動きをよく見て、南に大きく下がる時を狙ったのがよかったのかもしれない。

残雪期は天候によっては気温が下がるため、レインウェアやフリースなどの雨風に備えた装備、手袋や靴下の替えを持参し、体を冷やさないようにしよう。またアイゼンも忘れずに。

2024年は雪が少ないようであるが、残り少ない残雪を求めて、ぜひ唐松岳を訪れてほしい。きっと筆者のようにライチョウや星空、美しい山々に出会えるはずだ。

行程とタイムスケジュール
1日目:八方駅(10:00)⇒八方池山荘(10:30)⇒八方池(12:00)⇒唐松岳頂上山荘(15:00※小屋泊)
2日目:唐松岳頂上山荘(8:00)⇒唐松岳(8:15※小休止)⇒唐松岳頂上山荘(9:30)⇒八方池(12:00※昼食)⇒八方池山荘(13:30)⇒八方駅(14:10)

●唐松岳

住所:〒399-9301 長野県北安曇郡白馬村北城

●唐松岳頂上山荘

住所:〒938-0000 長野県白馬村宇奈月町黒部字黒部奥山 黒部奥山国有林36イ林小班

●白馬八方尾根(八方アルペンライン)

住所:〒399-9301 長野県北安曇郡白馬村八方4258

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