「お求めやすいお値段」or「お求めになりやすいお値段」正解はどっち?【ビジネスマナー常識チェック】

お手頃価格になっております

【それ間違いかも?ビジネスマナー常識チェック】#72

敬語の基本編(11)

◇ ◇ ◇

敬語の基本編10回目では、飲食店などでよく耳にする、どこか違和感のある表現をピックアップしてお伝えしました。今回は、どの言い方が正しいのか迷ってしまう表現を、クイズ形式でお届けします。

■「動詞+やすい」の尊敬語

①「お求めやすいお値段になっております」

②「お求めになりやすいお値段になっております」

正解は②。

①も②も量販店などでよく耳にする言葉ですね。基本的に、動詞に「やすい」をつけて尊敬語にする場合は、まずは動詞を「お~になる」の形にしてから「やすい」をつけます。

この場合、動詞の「求める」を「お求めになる」と尊敬語にしてから「やすい」をつけて「お求めになりやすい」とするのが適切です。

同じような例として「お出かけやすい」→「お出かけになりやすい」、「お読みやすい」→「お読みになりやすい」などがあります。

■うっかり謙譲語

①「クレジットカードが、ご利用になれます」

②「クレジットカードが、ご利用できます」

正解は①。

②「ご利用できます」は謙譲語「お(ご)~する」の可能の形です。謙譲語は自分側の行為・行動に対して使う言葉であるため、この場合は不適切です。

「利用できる」のは相手(お客さま)ですから、まずは「利用する」を尊敬語「お(ご)~になる」の形「ご利用になる」にしてから、可能の「なれる」をつけて「ご利用になれます」とします。

「ご利用しやすい」もよく聞く言葉ですが、「ご~する」は謙譲語。正しくは「ご利用になりやすい」です。

■否定の表現

①「クレジットカードは、ご利用できません」

②「クレジットカードは、ご利用になれません」

正解は②。

否定の場合も同様に、尊敬語「お(ご)~になる」にしてから、否定の形にします。

駅のアナウンスでよく耳にする「この電車には、ご乗車できません」も、正しくは「この電車には、ご乗車になれません」となります。

■「敬語」まとめ

11回にわたり「敬語」についてお伝えしました。

言葉は相手あってのもの。文法的に正しいからよいというものではなく、言い方や態度、選ぶ言葉によって相手への伝わり方は変わります。「言葉」そのものが持つ印象もあります。

敬語や言葉遣いの正解はひとつではありません。

今回正解とした「お求めになりやすいお値段」も、スッキリと「お手頃価格」と言い換えることができます。

「敬語」はその言葉通り、相手を敬う言葉です。相手を大切に思う気持ちを言葉にのせて届けられたらすてきですね。

(金森たかこ/マナー講師)

© 株式会社日刊現代