生態系乱す厄介者“オオキンケイギク”をクレヨンに 兵庫・三田市の高校生「価値上げて再利用したい」

オオキンケイギク

5月から7月頃にかけて、コスモスに似た鮮やかな黄色の花を咲かせる「オオキンケイギク」。道端などによく咲いていて、群生する場所ではその圧倒的な鮮やかさに目を奪われるほどですが、実は、脅威的な生命力で在来植物の生息場所を奪うとして「特定外来生物」に指定されています。

そんなオオキンケイギクを厄介者で終わらせず、クレヨンに生まれ変わらせる取り組みが兵庫県三田市の高校で行われています。同校の生徒に詳しい話を聞きました。

【写真】あまりに鮮やか! オオキンケイギク群生の様子 風景としては美しいのだけれど…

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オオキンケイギクは「キク」と名前に入っているため日本に元々ある在来種のように思えますが、原産は北米。明治時代に観賞用として輸入されました。生命力がとても強いのが特徴で、かつては工事の際の法面緑化に使用されたり、苗が販売されたりしていました。

しかしそれが問題でした。生命力があまりに強く、いったん定着してしまうと在来の野草の生育場所を奪うため、増えたオオキンケイギクが辺りを覆い尽くしてしまったのです。

顕著な例は、長野県の天竜奥三河国定公園にある天竜川です。環境省によると、1976年に確認されたオオキンケイギクが近年急速に分布を広げ、上流のほぼ全域でみられるようになりました。それとともに、長野県固有のツツザキヤマジノギクや、カワラニガナ、ツメレンゲ、カワラサイコなどの 河川敷固有の植物が減少または消失。さらにタコノアシやミクリといった貴重な植物への影響も懸念されています。

そこで国は2006年、日本固有の生態系に悪影響をおよぼす植物として、オオキンケイギクを特定外来生物に指定しました。全国の自治体は駆除に積極的に乗り出しています。

ちなみに、特定外来生物については、禁止事項や罰則が設けられています。環境省よると、特定外来生物を栽培、輸入、販売などすると、個人だと懲役3年以下もしくは300万円以下の罰金、法人なら、場合によっては1億円の罰金が科せられます。「キレイだし、ちょっとくらい家のお庭で育てても大丈夫じゃない?」などと考えて栽培しないことはもちろん、生えているのを見つけたら駆除する行動が推奨されます。

そんな、存在自体が“脅威”とも言えるオオキンケイギクですが、兵庫県立三田祥雲館高校の科学部生物班の生徒たちが今、現状では駆除されるしかないオオキンケイギクの価値を上げようと、クレヨンに生まれ変わらせています。名前は「アップサイクルクレヨン」です。

科学部生物班の生徒によると、きっかけは昨年、当時の3年生が授業で野菜の廃棄部分などを使ったクレヨン作りに取り組んだことでした。活動を途絶えさせずさらに発展させようと、今年度に入って科学部生物班が引き継ぎました。

その際に「野菜でできるなら雑草などでもできるのでは?」と考えて目をつけたのが、オオキンケイギクです。

材料に使ったクレヨンを広めることが駆除の推進にもつながるのではないか、“厄介者”の価値を上げる=アップサイクルできるのではないかと動き始めた科学部生物班。今年5月には市内の駆除体験会に参加し、オオキンケイギクの生態系などに対する理解を深めました。

クレヨン作りでは、学校の周りにも多く生えているオオキンケイギクを駆除して原料に用います。まずはミキサーで粉末状に。そこにミツバチの分泌物であるミツロウや食用油を混ぜ、湯煎で溶かして液体になったら、太めのストローに流し込んで成形します。固まれば、オオキンケイギクの花の色が生きた黄色いクレヨンの完成です。

実際にそのクレヨンで絵を描いてみると色が非常に鮮やかで感動したと生徒たちは言います。科学部部長で生物班班長の3年生、浅井勇輝さんは「この活動を始めるまで『アップサイクル』という言葉を知らなかった。邪魔になったり捨てられたりするものも、こんな風に利用できることを知ってもらいたい」と話します。

同科学部生物班では、オオキンケイギクの黄色に加えて、コーヒーの残りかすを材料にした茶色、藍染めに使用するタデアイを用いた青みがかった緑色のクレヨンをこれまでに作ってきました(青緑色は、タデアイを使って藍染した際に出る搾りかすなどで藍色のクレヨンを作ろうと試作した際の副産物)。来年度以降には、品質の良いものを大量に製作し「祥雲アップサイクルクレヨン」として販売する予定とのこと。これからも高校生たちの研究は続いていきます

※ラジオ関西『Clip』2024年7月10日放送回「トコトン兵庫!」より

(取材・文=境祐貴)

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