無党派層を動かしたのは「YouTube」と「政治不信」!?東京都知事選挙で石丸伸二氏が躍進した理由とは?選挙ドットコムちゃんねるまとめ

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2024年7月9日に公開された動画のテーマは「2024東京都知事選・石丸伸二候補について」

7月7日に生放送された、東京都知事選の選挙特番を編集してお届けします。今回の記事のテーマは、今回の都知事選で2位となった石丸伸二氏について。

前半では出口調査から見る石丸氏の躍進の背景を、後半では、知事経験者の太田房江参院議員と米山隆一衆院議員から見た、石丸氏の快進撃の理由を伺います。

【このトピックのポイント】

  • 石丸支持層を生んだ「政治不信」と「YouTube」
  • 空中戦を超えた「ネット地盤」の誕生
  • 現役国会議員「石丸氏の快進撃は『キャラ立て』と『チーム力』」

石丸支持層を生んだのは「政治不信」と「YouTube」

今回の東京都知事選挙では、現職の小池氏の3選となりましたが、これまで以上に無党派層の動きが大きく注目された選挙となりました。

無党派層を大きく動かしたと目されるのが石丸伸二候補です。

産経新聞・水内茂幸氏「無党派層は石丸候補にびっくりするほど乗って、裏返すと蓮舫さんにはびっくりするほど来なかった。まず、ここからお聞きしたいのですが」

JX通信社の米重克洋氏は、各社の出口調査で共通した傾向として、石丸氏が無党派層において小池候補を上回り、最大の支持を取った可能性があると指摘します。

米重克洋氏「明確に序盤と比べて票が伸びているんです。つまり、石丸さんの伸びというのは、無党派層の態度が決まっていったことによって伸びていったというのが正しい分析かなと思っています」

米重氏は、無党派層が石丸氏に投票した理由を「政治不信」と「YouTube」の2つの掛け算と位置づけました。

政治不信の観点では、与党が不祥事を起こしたら、野党が代わりうる選択肢として本当は期待を集めないとならないところ、期待されなかった中、「第3の選択肢として石丸氏に流れた形跡がかなりある」と指摘します。

なお、支持政党ごとの傾向では、

  • 無党派だけでなく、自民や維新支持層からも得票
  • 国民民主党支持層ではトップで、半数くらい石丸氏が取っている

という結果が出ていると紹介します。

米重氏「国民民主党なんて、そもそも小池さん支持のはずですよね」

朝日新聞・今野忍氏「連合とね。連合東京と国民民主だもんね」

米重氏は、第三極的な投票行動をする有権者が、怒濤のように石丸氏に流れたのが支持政党別の内訳でも言える、と指摘します。

また、米重氏らは、一週間前の情勢調査で「石丸現象」をどう捉えるかも調査したそうです。

米重氏「政治的意見を例示し、共感度を測る質問をしたところ、民主党政権に対する石丸候補支持層の評価はめちゃめちゃ低かった。小池候補と同じぐらい、蓮舫候補支持層だけ少し高いという状況で」

ここから米重氏は石丸支持層を、「少なくとも、与党か野党かというくくりで見た時に、野党に期待する素地はない」と分析し、石丸支持層には

  • 普段は投票から離れている
  • 政治にそこまで関心がない
  • 立憲などを(野党第1党だから等の理由で)仕方なく支持している

という人たちが集まった結果、政治不信の素地の中で新たなオルタナティブとして石丸候補が集票した、と読み解きます。

米重氏「で、それをドライバーにしたのが、やっぱりYouTube」

水内氏は、不在者投票の出口調査でも石丸氏の票が伸びていたことについて尋ねます。

米重氏は、「期日前と当日、それぞれの出口調査では石丸さんがリードしていたというのが事実」と返答します。

米重氏「ふつうに考えると無党派層のほうが当日出口に、期日前の出口は組織票が多いんです。普通の選挙前の感覚だと小池・蓮舫・石丸が並んでいたときに、石丸氏が強いのはどうしてだろうとなるわけですよね」

調査では、メディアごとの接触時間を聴取しました。すると、政治社会の情報源として長く使われたメディアをYouTubeと回答した人が投票に行った割合が非常に高い傾向があると示しました。

今野氏「いろんなコンテンツがある中で、敢えて選挙のYouTubeを見るわけだもんね」

米重氏「YouTubeを視聴する中で石丸さんに触れて、どんどん石丸さんのファンになっていく、共感していくという現象が選挙期間中にすごい急速に起きた可能性があると思います」

「YouTubeの力で増大し、まるで組織票のように……」石丸支持層が増えた背景

水内氏「今野さんも言ってたけど、アルゴリズムで、石丸さんがYouTubeでいっぱい出るようになったら、よけい相乗効果になるのかなあ」

米重氏は、フィルターバブル※1やエコーチェンバー※2という言葉を紹介し、「アルゴリズムによって、自分の興味関心に沿った情報が出てくるようになった。その結果、みんな見ているもの、聞いているものが違うようになり、みんな脳みその中身が違う『一億総メディア時代』と呼ばれる状態ができ、ソーシャルメディアにシフトした状態になった」と説明します。

※1 ネット利用者個人の検索やクリックの履歴を学習することで、ユーザーの意志にかかわらずパーソナライズされた情報のみを表示し続けた結果、ユーザーが自分の考えや価値観が「バブル(泡)」の中に孤立した情報環境になること

※2 SNS上で自分と似たような価値観や考え方のユーザーをフォローすることで、同じような情報ばかりが流通する情報環境になること

米重氏は、もともとYouTubeで力のある「コンテンツ」だった石丸氏が、「YouTubeの力で」増大していった流れを、次のように指摘します。

  • 選挙戦で本人が配信を行う
  • いろいろなYouTuberが中継、切り貼りなどで編集、発信する
  • 石丸氏のコンテンツがさらに増える
  • さまざまな形でレコメンドされ、拡散される
  • 石丸氏に興味関心があると見なされ、どんどんコンテンツが紹介されていく
  • 共感度が上がり、投票に行こうとする強い意志を抱くようになる

この結果、「まるで組織票のように、期日前から選挙に動員された」と米重氏は振り返ります。

米重氏「とくに都心部、区部での石丸さんの集票力は目を見張るものがあったと思います」

空中戦を超えた「ネット地盤」の誕生に、マスメディアは

米重氏「今回の教訓は、ネット地盤だと思います」

今野氏「ネット地盤?どういうもの?それは」

選挙には「地上戦」と「空中戦」という言葉があります。

従来より選挙戦で重視されてきたのは、地域の人々と握手した数だけ票が出るといわれる、いわゆる「地上戦」ですが、「古くなっている可能性がある」と米重氏は指摘します。

米重氏「我々が見えている普通の意味での『地盤』とは別に、『ネット地盤』というものが実はある。ネット地盤の中にはYouTube、X、それ以外のメディアを見ている人もいる。そういうときに、YouTubeは特に接触時間も長いし、政治社会の情報源としては、選挙の動員力も高いことがストレートに現れた可能性があります」

水内氏は、配信中に「今回の選挙は既存メディアの敗北」というコメントがあったことに触れ、今回の選挙戦における報道の違いを紹介します。

今野氏「とくにテレビだよね。忖度がすごいんですよ。放送法、公選法、あとなにか目に見えない忖度……」

今野氏は、中田敦彦氏が自身のYouTubeチャンネルに3人の立候補者を呼んでインタビューをしたことに触れ、「ああいうの、テレビやらないじゃない。特定の候補だけを取り扱ってはいけないんじゃないかって」と指摘します。

水内氏「そこを厳格にやるんですよね。新聞だって行数を決めたくらいで」

旧来のマスメディアは、「各候補者に公平に」情報量を限って紹介することに腐心しますが、「1人ひとりを呼んでじっくり話を聞くことはない」と2人は指摘します。

水内氏「我々の既存メディアの人たちからするとその世界しか見えてないかもしれないけれど」

今野氏「物足りなかったでしょ」

水内氏「実際にそうだよね、有権者で見ている人って、まったく違う世界を見ていて、それが今回の結果にびっくりするぐらい表れているっていうのが現実なんですよね」

米重氏は、従来の4媒体に代表されるマスメディアに、放送法などの影響を受けないYouTubeが加わったのが決定的なできごとだったと指摘します。

米重氏「放送法などのしがらみがない形で、60分ワンショットで候補者のインタビューを出すような、普通のテレビ局では考えられないことができる人たちのほうが強くなる可能性はある」

米重氏は、これまでにもその兆しはあったと指摘します。

たとえば2024年4月の衆院補選東京15区で飯山陽候補が、保守的イデオロギーを持つクラスターの人を取りに行った際にYouTubeをフル活用したのは「ニッチ的なアプローチでうまくいった」と振り返ります。

米重氏「今回起きていることはそれさえぶち破って、広がるところまで広がっていく。歴史的というかエポックメーキングなできごとだったと思います」

水内氏「既存メディアにいる我々は相当考えないとね」

今野氏「そう思いますよ」

しかし、テレビのコンテンツ制作力や素材などを加工する編集力には、まだ一日の長があると指摘します。

今野氏「テレビの切り抜きもYouTubeで回ってましたよね。テレビは見てないけれど、報道番組の政策をトピックごとにうまくまとめたやつとか」

ここで、生放送の視聴者から「投票率が伸びたのも石丸さんに有利に働いたのでしょうか?」との質問が入りました。

米重氏「間違いないと思いますね。投票率が伸びると誰が得をするかというと、無党派層で支持が多い候補が得をする。石丸さん、次に小池さん、はるか後ろに蓮舫さんという流れがあり、投票率が伸びるほど蓮舫さんには不利、石丸さんに有利な結果になったことが予想されます

石丸氏の快進撃は「キャラ立て」と「チーム石丸」にある?

続いては自由民主党・太田房江参院議員、立憲民主党・米山隆一衆院議員という知事経験者をお迎えした第一部で、石丸氏についてお伺いしました。

MC鈴木邦和「石丸さんの伸びた要因がYouTubeというお話がありましたけれど、それ以外でお気づきになったことはありますか」

米山隆一氏は、石丸氏がYouTubeという新しいものを取り入れているだけでなく、「YouTubeウケするコンテンツをよく考えている」と分析します。

実際、石丸氏の街頭演説も観に行ったと語る米山氏は、石丸氏の演説のポイントを「話が絞り込まれている」「ちょっとバトルをする」ところにあると分析します。

米山隆一氏「YouTubeとかってちょっとバトルをすると、PV(や閲覧数が)伸びるんですよ(笑)」

バトルをするというのは、「ちょっとした気持ち悪さ」のような引っかかりを作るようなものだ、と説明を加えます。

米山氏「石丸さんはちょっとそこを意識していて。自分を売れる、しかもちょっと……石丸さんってナルシスティックな感じがあるじゃないですか。あの気持ち悪さが売れるってたぶん意図的にやっていると思う」

MC鈴木「なるほど、それを含めて計算なんじゃないかと」

米山氏は、石丸氏に対し「自分を売ることに対する分析はたいしたもの。自分自身のキャラとかぶっているのかもしれないが、恥ずかしげもなく徹底してやれているのは、たいしたもんだ」と評価します。

太田房江氏は、石丸氏の選挙戦を支えた「チーム石丸」が作った流れに着目します。

太田房江氏「石丸さんって、『チーム石丸』ってのがあったんだろうと思いますよね。調べたら、すでに3冊も本を出しておられる。かなり前からチーム石丸は動いていたのかなあっていうふうに想像しています」

太田氏「そしてまた、そのチーム石丸がいろんな戦略を立てて、ひとつの頂点、新しいスターを作る過程そのものを、この選挙戦に持ってこられたというふうに見受けられるんです」

話題は、石丸氏が動画で発信した内容に移っていきます。

MC鈴木「石丸氏の動画で視聴数を集めたものは、既存の政治勢力に対しての不満や批判、そこに対しての熱を自分のプロモーションに使えているというか、その方向性は強く感じたんですけれど」

自身も国会の論戦で自民党を批判した動画が注目を集めた米山氏は、「既存の政治家に対する不信感ってすごいじゃないですか。そこをうまく叩くと一気にファンが来るわけですよ」と同意します。

MC鈴木「YouTubeでとくに支持を集めるためのある意味戦術、手法のひとつとしてこれからすごく大事になっていく。これからは、政治家は上手に活用していかなければいけないんですよね」

ここで太田氏が、「(石丸氏が)裏金問題のほかに、既存の政治家を叩いていた部分にはどういうところがありましたか?」と尋ねます。

米山氏「石丸さんは具体的なことは言わないんですよ。『政治屋』みたいな。でもそれも陰謀論的で楽しいんですよ。ある種、ディープステートみたいな話で。いま、政治屋が日本を悪くしているんだ!ってそういう感じ」

動画本編はこちら!

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