介護保険証も紙廃止→マイナ一本化へ厚労省方針…業界から案の定あがった「時期尚早」の声

現場の負担や混乱は眼中になし?(C)日刊ゲンダイ

またもや「任意」ではなく事実上の「義務化」になるのか……。

9日の日経新聞の朝刊によると、厚労省が現行の介護保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化する方針を示したという。

厚労省は日刊ゲンダイの取材に対し「廃止するとは明言していない。各方面に配慮して、デジタル化を進めていく」と回答するなど、早急な改革は否定している。

しかし、6月21日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」でも、「介護保険証等をマイナンバーカードと一体化する」ことで、「医療DX」を進めていくとしているから、政府にとって現行の介護保険証の廃止は既定路線なのだろう。

紙の健康保険証は年内に廃止されマイナカードに一本化されることになっており、国民の声を無視したデジタル化が進められている。これに続き、現行の介護保険証も廃止され、マイナカードに一本化される可能性はゼロではない。

■高齢者、現場の負担は大きい

介護保険証が廃止されれば、介護現場では混乱が予測される。一般社団法人「全国介護事業者連盟」の斉藤正行理事長はこう話す。

「まず、マイナカードを取得してもらうのが大変です。介護サービスの利用者には、認知症の方や、身寄りがなく周囲のサポートが受けられない方など、さまざまな人がいます。そうした人たちには、マイナ関係の手続きは負担が大きい。現場のトラブルも予想され、マイナに一本化するのは時期尚早ではないかと」

セキュリティー上の懸念もある。東京都高齢者福祉施設協議会の田中雅英会長はこう言う。

「保険証の保管が大変になるという問題があります。介護施設は利用者の介護保険証を預かるケースが多い。現行の介護保険証でも保管には神経を使いますが、個人情報が詰まったマイナカードと介護保険証では、紛失した際の責任が全く異なります。預ける利用者にとっても、預かる事業者にとっても、心理的な負担は大きくなるでしょう」

国民の命にかかわることだけに、強引に事を進めるのはいただけない。前出の斉藤理事長は言う。

「デジタル化がうまく進めば、現場の負担は削減できます。周知を徹底したうえで、もう少し時間をかけて導入を進めてもらいたい」

岸田政権のやり方では、医療や介護の現場に混乱が広がるばかりだ。

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