【2歳馬ジャッジ】デルアヴァーはラスト12秒0-11秒4と急加速 エンドレスサマーは函館2歳Sでも有力候補

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6月5週目の2歳戦

このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は福島芝1800mの新馬戦でラスト2F12秒0-11秒4と急加速して勝利した良血馬デルアヴァー、次走予定の函館2歳Sでも有力候補となりそうなエンドレスサマーなどが出た6月29、30日の2歳戦について指数と評価を掲載する。

6月29日(土) 福島5R 優勝馬 ヴァリアントマーチ 指数+1 評価B
1番枠から好スタート。5番枠のイノキもスタートが良く、2頭並走で先頭だったが、本馬が内枠の利でハナに立った。そこまで速いペースではなかったので持ったまま直線へ。直線序盤でイノキ、ロードヴェルトが迫って3頭の追い比べ。ラスト1Fでそれらを振り切ったところでファリーザに猛追されたが、何とか押し切って半馬身差で勝利した。

走破タイムは平凡で上がり3Fタイム35秒3、ラスト2F11秒4-11秒6も特に評価できるものではない。ただ、初戦を逃げて勝利した馬は、次走折り合って大きく前進する馬もいるだけに期待したい。

6月29日(土) 福島6R 優勝馬 ラインパシオン 指数-2(ダート) 評価B
9番枠から好スタートを切ったが、スッと引いて内から前を主張する馬たちを行かせた。道中は先頭から離れた3列目の外を追走。3~4角でじわっと2列目の外まで進出して直線へ。直線ではしぶとく伸び続け、最後に逃げ馬の脚が上がったところをキッチリ差し切って半馬身差で勝利した。

走破タイムはそこまで評価できないが、上がり3Fタイム36秒8はまずまず。ラスト2F12秒5-12秒7に関しても特に評価できる数字ではない。

母イナズマアマリリスは道営デビューでダートを5戦使われた後、中央に移籍して初芝の500万下を勝利。そこからすずらん賞2着、ファンタジーSを優勝すると、阪神JFでも5着と芝で驚きの上昇を見せた。今回のラインパシオンは評価できるものではないが、母同様、いずれ芝に転向して一気に上昇という成長曲線を見せるかもしれない。

6月30日(日) 福島1R 優勝馬 ニシノタンギー 指数-2 評価B
3番枠から五分のスタートを切った後、外からやや寄られたが行き脚はついていた。ただその後、折り合いを欠き後方に控えた。道中は後方2番手だったが、7頭立てということもあり、好位馬群から離されることなく追走。3角手前で外に誘導してそこから進出、4角で先頭列に並びかけ直線でさらに外に誘導。直線序盤で追われて先頭に立ったところで、中目からライヴバフィが差を詰めてきたが、振り切って3/4馬身差で勝利した。

前走の6月東京のクロワデュノールが勝利した新馬戦では2.4秒も離されての6着だったが、デビュー2戦目のここで決めた。前走は出遅れて今回以上に折り合いを欠く場面もあり、能力を出し切れていなかったのだろう。指数は芝中距離の未勝利戦としてはまずまず。勝ち負けを繰り返しながら上を目指す馬となりそうだ。

このレースは結果的にクロワデュノールが勝利した新馬戦組で1、2着。やはり指数が示す通り、東はクロワデュノール、西はダノンフェアレディの新馬戦が現段階では高レベルと言えそうだ。

6月30日(日) 福島5R 優勝馬 デルアヴァー 指数-4 評価AA
4番枠から出遅れ、そのまま無理なく中団の最内を追走。向正面で外からグランノーヴが一気に進出すると、一瞬追いかけようとする素振りは見せたが、我慢させて外へ誘導。3角でマクリに行って3~4角でかなり外を回るロスは生じたが、直線序盤で追われるとじわじわ伸び、ラスト1Fで突き抜けて1馬身半差で完勝した。

上がり3Fタイム34秒4は当日の福島芝中距離戦としてはまずまず。評価点はラスト2F12秒0-11秒4と急加速してフィニッシュしたことで、ゴール板を過ぎても加速していたような走りが印象的だった。

母アムールブリエはダートの交流重賞を何度も勝利し、牡馬も倒した強豪馬。その母ヘヴンリーロマンスは、天皇賞(秋)を優勝した名牝。そこに欧州最強馬フランケルを配して生まれたのがこの馬ということで、生産者としては相当な期待馬だろう。

現状はレースぶりに拙さを感じさせたが、秘める瞬発力は相当なもの。順調に使われ、レースぶりが上達すれば重賞戦線で活躍する馬となるだろう。

6月30日(日) 福島6R 優勝馬 ニタモノドウシ 指数-4 評価A
芝1200m戦でみなスタートダッシュが良いなか、2番枠からかなりまったりとしたスタート。後方2番手からの追走で前に離されたが、徐々にその差を詰めて3角では中団やや後方の外。ラスト2F過ぎの4角から勢い良く上がっていったが、それでも前とはまだ差があった。4角では中団の外、直線序盤で大外に出されると、短い直線の福島で一気に伸びて差し切り1馬身半をつけた。

このレースは芝1200mとしては緩めの流れ。走破タイムは平凡だが、上がり3Fタイム33秒6はこの日の福島芝では古馬を含めてNO.2の数字。これはかなり高く評価できる。今回は出遅れのロスがあり、全力を出したものではないだろう。次走に向けて上昇が期待できる。OP、重賞で活躍していく馬になりそうだ。

6月29日(土) 小倉1R 優勝馬 レイピア 指数-8 評価A
6番枠から五分のスタートを切って、ダッシュ良くハナを主張。そのまま緩みないペースを刻んだが、無理にスピードを出している感じではなく、スイスイと逃げていた。その脚色は最後の直線でも衰えず、序盤で1馬身ほどの差をつけ、ラスト1Fで2馬身半差まで広げ、3着馬には7馬身半差をつけて押し切った。

前走の新馬戦ではやや出遅れて、そこから押してポジションを取りに行った後に折り合いを欠き、ブレーキをかける場面があった。そんなロスがあったなか、馬場がやや悪化した好位の内目から3~4角で最短距離を通って勝ちにいく競馬。直線では外から差してきた馬を差し返し2着した内容がとても濃かった。

今回は一転してスタートを決め、優秀な走破タイムでの逃げ切り勝ち。1クラス上で通用する指数を記録した。やはり前走でかなりのロスがありながらも2着を死守したのは、能力の高さを示すものだった。

新馬戦で好指数勝ちした馬はどうしても疲れが残りやすく、そのあと順当な上昇が計算しにくいところもある。しかし、デビュー2戦目での好指数記録は、新馬戦ほどダメージが残らないだけにある程度の上昇を計算しやすい。この指数なら何戦か使ううちにOP、重賞で活躍する馬となるだろう。

6月29日(土) 小倉5R 優勝馬 エイヨーアメジスト 指数-2 評価B
九州産馬限定の新馬戦。8番枠からロケットスタートを決めてハナを主張、主導権を握った。4角までは後続もついてきていたが、直線に入ると独走開始。直線序盤で5馬身差、ラスト1Fで9馬身まで差を広げて圧勝した。今回の指数は一般の新馬戦でも十分に勝負になるもので、今後の活躍が大いに期待できる。

6月29日(土) 小倉6R 優勝馬 コスモストーム 指数-2(ダート) 評価B
1番枠からやや出遅れたが、そこから気合いをつけられると加速して2列目の最内を追走。道中で3番手に上がり、3~4角で前2頭の外に誘導した。直線序盤では前が止まらずまだ3番手だったが、じわじわ差を詰めると最後にグイッと前に出て半馬身差で勝利した。

走破タイムはそこまで優秀とは言えないが、上がり3Fタイム35秒7はまずまず。勝ったり負けたりしながら上を目指す馬になりそうだ。

6月30日(日) 小倉5R 優勝馬 ケイテンアイジン 指数+5 評価C
九州産馬限定の新馬戦。12番枠から五分のスタートを切ったが、行きっぷりがやや悪く、促されながら前に離されないように追走していく形。3角手前で2列目の外まで上がり、4角では単独3番手に上がった。直線では前の2頭がバテ始めたところを最後までしぶとく伸び続け、ラスト1Fで差し切って1馬身半差で勝利。走破タイム、上がり3Fタイム、ラスト2Fラップのどれも普通で、指数も平凡なものとなった。

また、出走馬の多くは翌週の九州産馬未勝利戦に連闘で出走。そしてひまわり賞(九州産馬限定)に中1週で出走するだろう。2歳の若駒を強行軍で使うことになる現在の九州産馬の競走番組は、九州産馬を早熟にしてしまうだけだ。九州産馬を優遇したいのであれば9、10月開催に九州産馬限定戦を作れば良いだけの話。もっと大事に使えば古馬になってグングン伸びる九州産馬がもっと出てくると思っている。

6月30日(日) 小倉6R 優勝馬 ユメシバイ 指数+1 評価B
6頭立ての新馬戦。大外6番枠から五分のスタートを切り、鞍上は先行させようと促していたが、徐々にポジションが下がってしまった。3~4角では最後方になり、普通ならこれは大敗のパターンだ。直線を向いても最後方だったが、ラスト1F手前からフットワークの回転が上がってグングン伸び、前をまとめて差し切って1馬身1/4差で勝利した。

ただ、走破タイムと上がり3Fタイムは平凡。結果、指数も平凡。昇級直後はやや苦戦しそうな気配だが、距離延長などの舞台で前進するかもしれない。ジワジワと力をつけて上を狙いたい馬だ。

6月29日(土) 函館1R 優勝馬 チギリ 指数-5 評価A
大外5番枠から好スタートを切って、逃げ馬の外2番手を追走。4角で自然と逃げ馬に並びかけ、直線序盤で早々と先頭。直線は内にモタれるのを修正しながら、そのまま押し切って1馬身3/4差で勝利した。このレースは3着馬に5馬身3/4差をつけており、なかなかの好指数勝ちとなった。

新馬戦はスタート直後のダッシュがあまりつかず、そこから何とか前に離されず4番手を追走。4角の手応えからは届きそうにもなかったが、最速の上がり3Fタイムで追い込み、2着に浮上する好内容だった。

デビュー2戦目の今回はグンと行きっぷりが良化。早い時期の2歳重賞レースはキャリアを積んだ馬の方が有利となりやすいもの。新馬戦勝ちの馬たち次第では、函館2歳Sでもチャンスは十分にありそうだ。

6月29日(土) 函館5R 優勝馬 エンドレスサマー 指数-8 評価A
5番枠から好スタート、好ダッシュでハナを主張し、主導権を握った。スピード任せに逃げているわけではなく、ちゃんと息を入れながら逃げ、ラスト2Fとなる4角でゴーサインが出されると後続を引き離しながら直線へ。序盤で3馬身半差、ラスト1Fでさらにリードを広げて5馬身差で圧勝した。

走破タイムの1分9秒4はなかなか優秀。1クラス上で通用する指数を記録しての勝利だった。これは今年の函館新馬戦では最高指数。今回の走りは優秀だが、新馬戦で強い走りをした馬は特に疲れが残りやすい点は注意。毎年のように新馬戦で強い勝ち方をした馬がそのあとの疲労から故障がちとなり、結果、早熟馬になってしまうという構図がある。

今回が余力残しの勝利だったなら、次走予定の函館2歳Sもあっさり突破するだろう。しかし、余力がなかったら馬群に沈んでしまうはず。函館2歳Sはこの馬の疲労度を見抜くことが最大のカギとなりそうだ。

6月29日(土) 函館6R 優勝馬 アースミューズ 指数-3(ダート) 評価B
4番枠からまずまずのスタートだったが、そこからのダッシュ良く先行争いに加わっていき、先行争いを制した内のルークススペイの外2番手を追走。4角では同馬に並びかけ、直線では一緒に後続を引き離していく。ラスト1Fで抜け出したところでフラッシュポイントに詰め寄られたものの、セーフティリードもあって1馬身1/4差で押し切った。

走破タイムはそこまで速くなく、指数も優秀というわけではない。しかし、このレースは3着のルークススペイ以下がバラバラになって入線しており、指数以上の強さを秘めている可能性はありそうだ。

6月30日(日) 函館1R 優勝馬 シュードタキライト 指数-3 評価B
4番枠からトップスタートを切ったが、内からハナを主張したミッドナイトゲイルを行かせて2列目の外を追走。道中で出遅れたダイチラポールが掛かり気味に先頭に並びかけ、本馬は3番手で3角へ。4角では手応えが悪くなったダイチラポールと先頭のミッドナイトゲイルの間を割って直線へ。そこからじわじわ伸び、ラスト1Fで抜け出して1馬身半差で勝利した。

このレースで断然の1番人気に支持されたのは、前週の新馬戦で好指数を記録しての3着だったミッドナイトゲイル。しかし、今回は前走ほど走れず2着に敗退。新馬戦2着からの2戦目だったダイチラポールはまさかの殿負け。そんな一戦を勝利したのがキャリア3戦目のシュードタキライトだった。2歳戦で経験が浅いうちはキャリアを積んでいる馬のほうが信頼できる面があり、その典型例と言える一戦だった。

6月30日(日) 函館5R 優勝馬 ゴーゴータカシ 指数-2 評価B
2番枠から好スタートを切って、内枠の利を生かして先頭に。1角では外に膨れる怪しい場面もあったが無事に回って逃げた。そこからは後続を引き付けながらのマイペースの逃げ。直線を向いても脚色は衰えず、序盤で2馬身のリードを奪うと、ラスト1Fでブルータスに半馬身差まで詰め寄られたが、振り切って半馬身差で勝利した。

上がり3Fタイムは36秒1、ラスト2Fは11秒8-12秒1とまずまずで指数も同様の評価に。新馬戦を逃げて勝利した馬は次走以降に大きく伸びることもあるので、勝ったり負けたりしながら、スタミナを生かして上にいくことに期待だ。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)デルアヴァーの指数「-8」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.8秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。



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