絶滅植物が22種に 1種から大幅増 佐世保市レッドリスト、10年ぶり改訂

絶滅種に分類されたオキナグサ(右上)、ママコナ(左上)、サワギク(下)=佐世保市内(川内野さん提供)

 長崎県佐世保市は、絶滅や絶滅の恐れがある希少な野生動植物をまとめたレッドリストを10年ぶりに改訂した。絶滅種では植物をこれまでの1種から22種に大幅に増やした。大半は1980年に発行された長崎県植物誌で市内に生育していると記載されてきたが、調査しても35年以上確認できなかったことから絶滅と判断した。
 新たに絶滅種に加わった植物は、ラン科のムカゴトンボやバラ科のアズキナシ、ミカン科のタチバナなど。ハマウツボ科のママコナは95年10月に烏帽子岳で発見され、3年間は確認できたが、その後見られなくなった。生息地が草に覆われやぶになったことが原因という。
 キンポウゲ科のオキナグサは84年5月に隠居岳の麓で住民が採取した記録が残っている。しかしその後は発見できなかった。日頃から植物などの生息を調査し、改訂委員会の委員を務めた世知原町の川内野善治さん(76)によると、草原に生育するが、畜産業が衰退したことと園芸目的の採取が絶滅の原因という。
 川内野さんは「絶滅の要因はさまざまで影響が複雑に絡み合っているが、天然林を伐採しスギやヒノキなどを植林したことは大きな要因」と分析。「キク科のサワギクも94年5月に3株が発見されたが、植林による日照不足で消滅してしまった」と話す。
 レッドリストは2回目の改訂。前回改訂と種数を比較すると、絶滅種は植物が21種、動物が1種増加。絶滅危惧種I類は植物が35種、動物が13種減った。リストは絶滅危惧I類の植物についても「非常に危険な状況」「絶滅の可能性がある」と警鐘を鳴らしている。
 改訂委の中西弘樹委員長は総評で「市内に存在しない種の生息、生育地が発見され新たに加わったものや、多量に発見されたためリストから外れた種もあるため、種数の比較が単純に生物環境の変化を表しているわけではない」と指摘。その上で生物環境の悪化の要因に里地・里山の放棄や野生生物の繁殖を挙げている。

© 株式会社長崎新聞社