パリオリンピックで使用される新型バイク「V-IZU TCM2」の開発の裏側とは!?【東レ・カーボンマジック】

パリオリンピック自転車トラック競技でメダルを託された次世代の新型バイク「V-IZU TCM2」

パリオリンピック、自転車トラック競技で使用される次世代新型バイク「V-IZU TCM2」が2024年5月にお披露目されると、マスコミの間でも話題になった。車体のほとんどがカーボン製であり、従来の形状とは大きく異なった異質な外観である。
この新型バイクを開発したのは東レ・カーボンマジック株式会社。長年、レーシングカー開発のパイオニアとして業界をリードしてきた会社であり、自動車・バイクをはじめ、航空・宇宙・ドローン、鉄道、産業機器、医療等、様々な分野の精密部品や大きな構造物の設計・解析から試作・量産までを手掛けている。

今回パリオリンピックに向けては公益財団法人JKAの補助事業を受け、東レ・カーボンマジックが開発を行なった。

開発期間1年目のシーズンは、手探りの状態から始まった。レーシングカーなど多岐にわたるカーボンコンポジット開発の実績があるとはいえ、トラックバイクはこれまで開発したことがなく、まず「開発ツール」として普段はレーシングカー開発に主に使用している風洞施設の一部をトラックバイク専用に改修した。この風洞実験と解析シミュレーションを繰り返し行い、車体構造の最適化を目指した。

そして2年目を迎える前にプロトタイプである「TCM-1」が完成。開発の先頭に立った「東レ・カーボンマジック」社長、奥明栄氏は語る。「HPCJCテクニカルディレクターのブノワ・べトゥ氏からTCM-1に対し良い評価をいただいたことで、目指す方向性が間違っていなかったという手応えとTCM-2の開発は、空力性能の向上を最重要テーマとして、自由な発想で開発することができました」
TCM-2は、空力性能を目標値以上に向上させることに成功。東レが持つ最新の炭素繊維群(T1100G M40X M46X)も活用し、軽量かつ高剛性なフレーム・フォーク、エアロホイールを装備した世界最速を謳える「V-IZU TCM-2」を創り上げた。

一番意識したことを問うと、奥明栄社長は「期限」と即答する。「パリオリンピックに向けての開発だったので、明確な期日があった。無期限にトライ&エラーを行なえるわけではない。期日までにいろいろなパラメーターを最適化し、短縮化する。そこが難しいポイントだった」

パリオリンピックがでの選手の活躍に期待する一方で、開発チームとしては、次期開発に向け、すでにいくつかアイデアが湧いているという。東レ・カーボンマジックの目標は高い。

取材協力:東レ・カーボンマジック株式会社

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