日本勢の初優勝なるか? 第3回WUBS展望

8月10日(土)から3日間、国立代々木競技場第二体育館で開催される世界大学バスケットボール選手権(World University Basketball Series=WUBS)までいよいよあと1ヵ月を切った。第3回となる今年のWUBSは、7つの国と地域を代表する8チームが出場。日本からは、インカレ(第75回全日本大学バスケットボール選手権大会)チャンピオンで昨年のWUBS準優勝の白鷗大、今春の第73回関東大学バスケットボール選手権大会で連覇を達成した日本体育大の2チームが単独チームとして出場するほか、日本学生選抜も名を連ねている。

昨年のWUBSは、チャイニーズ・タイペイのチャンピオン国立政治大(NCCU)が2度目の出場で初優勝を成し遂げた。日本の王者として出場した東海大をDay1の1回戦で下して波に乗り、Day2の準決勝ではNCAAディビジョン1のラドフォード大(アメリカ)を撃破。最終日(Day3)決勝でも白鷗大に勝利した。

白鷗大は初戦でペルバナス・インスティテュート(インドネシア)に大勝した後、WUBS初代チャンピオンのアテネオ・デ・マニラ大(フィリピン)を準決勝で倒しての決勝進出だった。最終日のNCCU戦も、前半終了時点で54-33と突き離されながら、後半の猛反撃で最終的に90-84の6点差に詰め寄り、大いに決勝の舞台を盛り上げた。

Day3はこの一戦以外も、心の動く場面がいくつもあった。7-8位決定戦では、高麗大がシドニー大を破り、WUBSにおける韓国勢初勝利を挙げ歓喜の瞬間を迎えた。前日その高麗大との日韓大学王者対決を59-50でモノにした東海大は、最終日にはペルバナス・インスティテュートを100-48と圧倒。大応援団の前で日本の大学王者の面目を保った。

3位決定戦のラドフォード大対アテネオ・デ・マニラ大戦では、試合前にラドフォード大のメンバー紹介を行う際、大会直前の故障で出場できなくなったフレッシュマンの山﨑一渉(仙台大附明成卒業)をアナウンスする粋な計らいも。ユニフォーム姿でコートに登場した山﨑を、温かな拍手と歓声が包んだ。もちろん、フィジカルで高さもスピードもある両チームの激突自体も見どころ満載。最終的にはラドフォード大が77-68のスコアで勝利して3位の座に就いた。

日本勢はこれまで王座獲得には至っていないが、今回はどうなるか。組み合わせを見ながら、第3回WUBSをまずは8月10日(土)のDay1に行われる4試合から展望していこう。

第2回WUBSのDay3に行われた3位決定戦では、故障離脱でプレーできなかった山﨑一渉もユニフォーム姿でコートに登場した(写真/月刊バスケットボール)

GAME1 11:10 Tip-off
ペルバナス・インスティテュート(インドネシア) vs デ・ラサール大(フィリピン)

オープニングゲームは、インドネシアとフィリピンの大学王者同士の激突となった。ペルバナスには2023-24シーズンに国内プロリーグIBLでプレーした学生アスリートが複数在籍しており、一方のデ・ラサールにはフィリピン代表の若手のホープが在籍している。

ペルバナス側で注目すべきプレーヤーは、インドネシアの大学王者を決めるリガ・マハシスワ(LIMA)の2023年度ファイナルでMVPに輝いたガード、グレーンズ・タンクランだ。ペルバナスはフィジカルの強さとスピードを持ち味としているが、昨年のWUBSではチーム全体としてターンオーバーの連発から致命的な連続失点を喫する場面が多かった。タンクランがWUBSの舞台でMVPレベルのプレーメイクをできれば結果は異なるはずだ。

インドネシアの大学界最高のガードとして来日するグレーンズ・タンクラン。昨年はターンオーバーが多く決定力も発揮できなかったが、今年はどうか?(写真/月刊バスケットボール)

一方のデ・ラサール大では、フォワードのケビン・キンバオとセンターのメイソン・アモスというフィリピン代表プレーヤーが見逃せない。2人ともオリンピック予選のロスターにも名を連ねており、キンバオはフィリピン代表が戦った3試合すべてに出場している。アモスは、実は昨年の大会にアテネオ・デ・マニラ大の一員として出場していたストレッチタイプのビッグマンだ。この7月に突如デ・ラサール大への転入を発表したばかり。現在フィリピン国内では相当大きな話題となっている。

パリオリンピック予選でラトビアに勝利するなど世界の注目を浴びたフィリピン代表。そのロスターに名を連ねたケビン・キンバオ(前列左#28)とメイソン・アモス(前列中央#21)が、デ・ラサール大に所属している(写真/FIBAOQT2024)

この試合は、彼らの活躍を通じて東南アジアのバスケットボール界の今後を垣間見る機会となりそうだ。名前を挙げた3人以外にも、Bリーグのアジア枠を狙えるポテンシャルを持つプレーヤーたちがいるので、ぜひとも注目してみてほしい。

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GAME2 13:40 Tip-off
NCCU(チャイニーズ・タイペイ、前回優勝) vs 日本体育大(関東1位)

この一戦は、ディフェンディング・チャンピオンのNCCUに関東の王者で初出場の日本体育大が挑むという構図になる。両チームには能力の高い留学生ビッグマンが複数所属しており、得点力の高いバックコート陣もそろっている。好ゲームが予想される組み合わせだ。

NCCUは昨年のWUBSで、身長208cmのビッグマンで大会MVPに輝いたムハマド・ラミン・バイェを核としたオフェンスと、変幻自在のハーフコート・ゾーンディフェンスで3つの白星を重ねた。今年の大会で同じ戦い方をするかどうかはわからないが、サイズもあり運動能力も高いバイェが昨年同様の破壊力を発揮するとなると、日本体育大にとってはいずれにしても非常に大きなチャレンジとなる。

昨年のWUBS決勝でのムハマド・ラミン・バイェ。白鷗大相手に30得点、13リバウンドの大活躍だった(写真/月刊バスケットボール)

対して日本体育大は、高さに頼らず平面的なバスケットボールで対抗するのが持ち味のチームだ。ポイントガードを務める土家拓大や2024年度男子U22日本代表チームに名を連ねているパワーフォワードの小澤飛悠らがコートを駆け巡ってハイペースな展開で商機を狙う。

見どころの1つはビッグマン同士のせめぎあいだ。NCCUにはWUBSのMVPバイェが、日本体育大にはスプリングトーナメントで2年連続MVPに輝いた身長206cmのセンター、ムトンボ ジャンピエールがいる。この「MVP対決」が実現するとなると、特にジャンピエールにとっては、国際舞台で実績を挙げている相手に対して自らの実力を測る機会になる。それは今後のキャリアを考える上でも大きな意義を持つだろう。

日本体育大が平面的な展開でリズムをつかむには、小澤飛悠の得点力が欠かせない要素になる(写真/月刊バスケットボール)

また、昨年のNCCUはビッグマンだけでなく、2024-25シーズンに滋賀レイクに加入するユー アイジェ(游艾喆)らを擁したガード陣も非常に有能だった。平面的な展開を指向する日本体育大のバックコート陣がそこにどう対抗していくかも、面白い見どころになるだろう。

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GAME3 16:10 Tip-off
白鷗大(日本1位、前回準優勝) vs シドニー大(オーストラリア)

昨年のWUBSで準優勝に輝いた白鷗大と、唯一白星なしで帰国したシドニー大と相まみえる一戦。当然白鷗大は負けるわけにはいかない。一方のシドニー大は失うものがない上、2度目の来日で経験的にも昨年以上に自分たちらしさを表現しやすいだろう。セミプロリーグのNBL1でプレーするメンバーも複数いるチームで、指揮官も新任のマシュー・ジョンストンHCに交代して心機一転という状況にあることを考えても、今大会ではダークホースとも言えそうなチームだ。総じて白鷗大にとっては、実績とは無関係に思いのほか危険な試合かもしれない。

白鷗大としてのポイントは、「白鷗大らしくプレーできるかどうか」だ。特に、フィジカリティーの高いシドニー大に対してディフェンスとリバウンドを頑張れるかどうか。シドニー大は現在進行中のオーストラリア国内リーグUBLでリーグトップの平均90.8得点というチームだが、WUBSでシドニー大に同じ展開を許すわけにはいかない。

昨年のWUBSでは平均17.0得点、7.3リバウンド、3.3アシストと大いに存在感を示した白鷗大のガード佐藤涼成。スプリングトーナメントでは故障者もありベスト8入りを逃しているだけに、冬に向けWUBSで弾みをつけたいところだろう(写真/月刊バスケットボール)

1つのめどとして、失点を70点台もしくはそれ以下にとどめられるかどうかが見どころだ。それができれば、オフェンス面のギアも自然と上がるに違いない。2024年度男子U22日本代表チーム入りした佐藤涼成、佐伯崚介、境アリームら能力の高いタレントの大暴れを期待できる。

逆にシドニー大は、強度の高い白鷗大のディフェンスに対してアグレッシブなドライブを持ち味とするマイキー・ヨーンらが決定力を発揮できるかどうかがカギだ。ガードもビッグマンも、フィジカリティーで簡単に負けないことが重要になる。高いモティベーションで来日するだろう彼らに、スキを見せたら痛い目を見るに違いない。

シドニー大のマイキー・ヨーンは得点力の高いガード。本領を発揮するようなら白鷗大は苦戦を強いられるに違いない(写真/月刊バスケットボール)

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GAME4 18:40 Tip-off
日本学生選抜(特別招待) vs 高麗大(韓国)

日本の大学界のオールスターチームと言える日本学生選抜と、韓国の最強チーム高麗大の激突——Day1のフィナーレを飾る一戦には、特別な意義を持つ対戦が組まれた。高麗大に関しては本稿公開時点では確定ロスターが発表されていないため、細かなマッチアップの議論はできない。とはいえ両国の直近の状況を考えると、それぞれのチームを推すファンがそれぞれのチームに是が非でも勝っておいてほしいと願う一戦ではないだろうか(もちろん当事者の両チームは勝利を目指しているはずだ)。

5月に開催された李相佰盃での塚本智裕。WUBFの日本学生選抜にも名を連ねている(写真/月刊バスケットボール)

今年5月に開催された第47回李相佰盃日・韓大学代表バスケットボール競技大会では、今回のチームとは別編成とはいえ、日本学生代表チームが韓国学生代表チームに1勝2敗と負け越している。また、パリオリンピックに向けたウォームアップゲームとして7月5日に有明アリーナで行われた日本代表対韓国代表の一戦では、日本は本大会出場権を持たない韓国に対し84-85で敗北を喫している。単に負けただけでなく、全国から集まった13000人越えの大観衆の前で、一時20点差のビハインドを背負う屈辱的な展開でもあった。この流れの中で、さらに日本学生選抜が韓国の王者に敗れる場面を、日本側のファンは見たいわけはない。

一方高麗大としては、前述のとおり昨年のWUBSでDay2の東海大戦に50-59で敗れており、最終的にも8チーム中7位という不本意な成績に終わっている。今大会でも初戦を落として早々に優勝争いから退くわけにはいかないだろう。

ゆえにこの一戦は理屈ではなく、双方が厳しく勝ちにこだわる激闘となるのではないだろうか。誰がコートに立つにしても、闘志や気迫のこもった奮闘に期待したい。それは間違いなく両国のバスケットボールを前進させる力になる。

李相佰盃の第1戦でレイアップに向かうユ ミンス。高麗大で活躍する身長200cmのフォワードだ(写真/月刊バスケットボール)

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代々木第二の激闘をお見逃しなく

以上、Day1の8月10日に行われる4試合を経て、第3回WUBSは12日(月・祝)まで全12試合が組まれている。Day2以降の対戦日程は以下のとおり。世界の大学生バスケットボールプレーヤーたちの闘志と友情が交差する3日間。代々木第二は今年も熱くなりそうだ。

☆Day2以降の試合日程

8月11日(日)
GAME5 5-8位決定戦(11:10 Tip-off)
GAME6 5-8位決定戦(13:40 Tip-off)
GAME7 準決勝(16:10 Tip-off)
GAME8 準決勝(18:40 Tip-off)

8月12日(月・祝)
GAME9 7位決定戦(11:10 Tip-off)
GAME10 5位決定戦)(13:40 Tip-off)
GAME11 3位決定戦(16:10 Tip-off)
GAME12 決勝(18:40 Tip-off)

全試合日程を終えた後、全チームが集合して撮影した1枚。バスケットボールで世界の若者たちがつながっていることを感じさせるひとときだった(写真/月刊バスケットボール)

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