欧州の新型ロケット「アリアン6」初打ち上げ 軌道到達と超小型衛星放出に成功

欧州宇宙機関(ESA)は日本時間2024年7月10日に「アリアン6」ロケット初号機の打ち上げを実施しました。ロケット2段目の軌道到達と搭載されていたペイロードの軌道投入に成功したことがESAから発表されています。

打ち上げに関する情報は以下の通りです。

■打ち上げ情報:Ariane 62(VA262)

ロケット:アリアン6(Ariane 62)
打ち上げ日時:日本時間2024年7月10日4時0分
発射場:ギアナ宇宙センター(フランス領ギアナ)
ペイロード:超小型衛星、実験装置、再突入カプセル(合計16)

アリアン6は2023年7月まで運用されていた「アリアン5」の後継にあたるロケットです。1段目には「Vulcain(バルカン、ヴァルカン)」エンジン1基、2段目には「Vinci(ビンチ、ヴィンチ)」エンジン1基を搭載。機体構成は固体燃料ロケットブースター「P120」を1段目の側面に2基備えた「Ariane 62」と、4基備えた「Ariane 64」の2種類が用意されています。地球低軌道(LEO)への打ち上げ能力はAriane 62が10.3トン、Ariane 64が21.6トン。静止トランスファ軌道(GTO)への打ち上げ能力はAriane 62が4.5トン、Ariane 64が11.5トンとされています。

ペイロードとして5つの実験装置、9つの超小型衛星、2つの再突入カプセルを搭載したアリアン6初号機は、日本時間2024年7月10日4時0分にフランス領ギアナのギアナ宇宙センターから打ち上げられました。ブースターの分離、1段目と2段目の分離、2段目エンジン1回目の点火と順調に飛行。発射18分後には2段目エンジン1回目の燃焼が完了し、高度700km×300km(計画値)の楕円軌道に投入されたことで、アリアン6は初の軌道到達に成功しました。続いて、打ち上げミッションの第2段階として発射56分後に2段目エンジン2回目の燃焼が実施され、高度580km(計画値)の円軌道に遷移。発射1時間6分後には搭載されていた超小型衛星9機の放出にも成功しています。

一方、打ち上げミッション第3段階の技術デモンストレーションとして発射2時間37分後頃に計画されていた2段目エンジン3回目の燃焼と、それに続く再突入カプセル2機の分離は実施されませんでした。2段目のVinciエンジンを再点火するにはアリアン6用に開発された補助推進装置(Auxiliary Propulsion Unit: APU)が必要です。アリアン6を製造したアリアングループによると、APUの主な役割は推進剤タンクの加圧ですが、浮遊する推進剤をVinciエンジンの再点火時にタンクの底へ集めるために加速度を生じさせたり、必要に応じて推力を追加させたりする役割もあります。APUは超小型衛星放出後に一旦は再始動したものの、何らかの問題が生じて数秒後に停止し、その後の2段目は計画通りの軌道から逸れていったことがESAの打ち上げミッションライブ配信で報告されています。

■打ち上げ関連画像・映像

■打ち上げ関連リンク

Source

  • ESA – Europe’s new Ariane 6 rocket powers into space
  • ESA – Ariane 6 first flight (Official broadcast) (YouTube)
  • ArianeGroup – The Ariane 6 APU is ready

文/sorae編集部 速報班 編集/sorae編集部

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