『虎に翼』三山凌輝の“悲しげなまなざし”が胸を打つ 寅子に“自覚”を促した直明の言葉

『虎に翼』(NHK総合)第73話で、寅子(伊藤沙莉)は初めて家族との間に溝が出来ていることを自覚した。突然の異動命令に家族との溝、寅子が直面する課題はそれだけではない。寅子が担当する福田夫婦の離婚調停は瞳(美山加恋)の欠席で不成立となり、甘味処・竹もとでは女性司法修習生たちが「佐田さんの言動は短絡的よね」と話すのを耳にしてしまう。

自分の身に降りかかってきた出来事、そして直明(三山凌輝)からの指摘や、ともに女性司法修習生たちの会話を聞いていた梅子(平岩紙)の言葉から、寅子はこれまでの自分の言動について思い返すことになる。

第73話では、寅子に自覚を促す直明の言葉が印象的だった。寅子は花江(森田望智)が感情を爆発させて言った言葉や涙を流す様子に呆然とするだけだった。寅子は花江が言っていたことを全く理解していないわけではないと思うが、どこかまだ納得いかないような顔をしている。そんな中、直明は寅子に「駄目ではなかったけど、本当にささいな『ん?』みたいなズレは結構あったかな」とはっきりと指摘した。

責任感が強く、家族想いな直明の人物像を深く落とし込んで演技をしている三山の穏やかな口調、まっすぐな目には説得力がある。決して感情的にならず、姉に伝えるべきことをはっきりと言葉で伝えられるのは直明しかいないと感じた。

直明は姉を支えたい気持ちもあるが優未の寂しさも十二分に理解している。だからこそ、直明が寅子に「(優未に)手のかからないお利口さんを求めてなかった?」と言った時、三山が見せたもの悲しげなまなざしに胸を打たれた。一度は優未(竹澤咲子)にいい子を求めたつもりはないと否定していた寅子も、この言葉に何も返すことができなかった。

なお、SNSでは瞳から刃物を向けられた寅子をかばった小橋(名村辰)の姿が話題に。小橋は腰を抜かしながらも寅子のもとへ駆け寄り、「おい、何があった!? ケガは!?」と口にした。

いつもは寅子に憎まれ口を叩く小橋だが、寅子を心配する様子に他意はない。瞳が連れて行かれたのを見て、気が抜けたようにその場にへたりと座り込んだことで、寅子を心配し、彼なりに気を張っていたのだと分かり、その優しさに驚かされた。SNS上では「小橋、非力だけど頑張ったよ!」「小橋、寅子のこと心配してて見直した」「小橋がトラちゃん守ろうとしたところが胸熱」などの声があがっていた。

物語の終わり、寅子は優未が自分の前では決して見せない無邪気な笑顔をしているのを目にして、堪えきれず涙を流した。涙を拭い、意を決したように寅子は家族と向き合う。他者からの指摘によって自覚を促された寅子は、家族とどのような言葉を交わすのだろうか。
(文=片山香帆)

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