犯罪を犯しやすい状況にいると犯罪を犯してしまう?犯罪を未然に防ぐ「犯罪機会論」の具体的な手法とは?【図解 犯罪心理学】

環境が犯罪を生み出す?

「犯罪機会論」とは、犯罪者自身ではなく、環境や状況を変えることによって犯罪を未然に防止しようという考え方のことです。

たとえば、なんらかの犯罪の意図を持った人物がいたとして、近くを警察官が巡回していたり、防犯カメラが設置してあったりといった、犯罪を実行するための障害となる要因があると、犯行をためらわせることができます。逆に言えば、そうした障害がない場所は、犯罪の起こりやすい危険なスポットといえるわけで、そうした場所を特定し、犯罪を実行しにくい環境へと作り変えることで、結果的に犯罪を減らそうというのが「犯罪機会論」の手法です。

従来の犯罪心理学では、犯罪の原因を犯罪者自身の性格や生育歴などに求め、それを改善することで犯罪を抑制しようという「犯罪原因論」が主流でした。しかし、性格や嗜好を矯正するのはそう簡単なことではありませんし、そうした人物を生み出してしまった社会背景まで含めて変えるとなると、それだけ時間もコストもかかります。

その点、「犯罪機会論」では、局地的な環境や状況に着目し、物理的にそれらを変えることで犯罪の抑止効果が期待できます。つまり、防犯という点では非常に効率のよい手法ということができるでしょう。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
監修:越智啓太
監修者プロフィール
法政大学文学部心理学科教授。1965年、神奈川県横浜市生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻修了。警視庁科学捜査研究所研究員、東京家政大学文学部助教授、法政大学文学部准教授を経て2008年より現職。臨床心理士。専門は犯罪捜査への心理学の応用。著書に『犯罪捜査の心理学』(化学同人)、『ケースで学ぶ犯罪心理学』(北大路書房)ほか多数。

昨今、様々な事件や特殊詐欺など凶悪な犯罪が増えており、ニュースで犯罪に関する情報を聞かない日はないといえます。誰もが利用するSNSを介した犯罪も当たり前になっており、より巧妙化しながら身近に潜む問題にもなっています。こうした問題や実態について研究し、犯罪予防や再犯防止に役立てようとするのが『犯罪心理学』です。
犯罪心理学は、心理学の中でも実際の現場や実践に役立つことを目的とした“応用心理学”の1つで、特に犯罪行動・非行や犯罪者の心理・行動パターンに焦点を当てた研究分野です。専門書や教科書が多いジャンルですが、本書では図やイラストを用いて、1トピックを見開き1ページでわかりやすく解説。
“普通の人”が犯罪に手を出してしまう経緯、犯行内容から見える犯人像や周囲の環境、巧妙化する手口や防犯法など、知らなかった犯罪心理学を、楽しみながらもしっかりと学べる一冊です。

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