母の死後、タンスから「300万円」を発見! どうせ相続税がかからないなら、「申告ナシ」でもらって大丈夫?「追徴課税」になる場合もあるの?

タンス預金を発見した場合は状況に応じて申告が必要

結論として、遺産総額が「基礎控除額」を超える場合にタンス預金が見つかった際にはきちんと申告する必要があります。また、申告すべき財産には、現金の他にも、株式をはじめとした有価証券、不動産、生命保険金、金や宝石、著作権など、経済的価値のあるもの全てが含まれることにも注意が必要です。

遺産総額が基礎控除額を超えているにもかかわらずタンス預金をはじめとした財産を申告せずにいると、税金逃れにつながる可能性があります。また、過少申告をしたことによる追徴課税を受ける恐れもあるため注意が必要です。

「基礎控除額」は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」の式によって計算することができます。

例えば法定相続人が配偶者1名、子ども2名の計3名だった場合、「基礎控除額」は4800万円になり、タンス預金を含めた相続財産の総額が「4800万円」未満の場合には、相続税の課税はされないことになります。

そのため、この場合には申告する必要はありません。遺産総額の計算誤りがないように注意を払いましょう。

また、タンス預金を見つけた人が他の相続人に黙って受け取ってしまうと、後々の親族間トラブルに発展することもあります。相続の権利がある人全員にタンス預金の存在をしっかりと伝えるようにしましょう。

主な税務調査のタイミング

税務調査の実施は、相続税を申告するタイミングなどが多いようです。相続税は高額となるケースが多く、申告漏れも生じやすいため、税務調査が入ってしまう可能性が比較的高いといわれています。

今回のケースでは相続税申告期限内にタンス預金を発見しているため、「過少申告」とならないように、他の相続財産とあわせてきちんと申告しなければなりません。

実際に国税庁の「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」をもとにすると、実地調査件数8196件に対し、7036件もの申告漏れ等が指摘されています。その申告漏れの割合は85.8%と非常に大きな数字です。税務調査が一度入ってしまえば、多くの場合、何かしらの指摘が入ってしまうと考えてよいでしょう。

タンス預金の無申告は相続税逃れとみなされる危険性がある

ここまで、親族の死後にタンス預金を発見した場合に申告すべきなのかを説明しました。タンス預金の無申告は「相続税逃れ」といった疑いをかけられるリスクがあります。

発見した場合には、他の親族にタンス預金の存在をきちんと伝えた上で、他の相続財産とあわせてきちんと申告しましょう。

出典

国税庁 令和4事務年度における相続税の調査等の状況

執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート

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