素人同然で空手部に入部→1年後に大会優勝 青木真也らとの練習でトップ目指す26歳の素顔

インタビューに応じた野村駿太【写真:本人提供】

「DEEP 120 IMPACT」で泉武志と対戦

総合格闘家の野村駿太(26=BRAVE)は14日、格闘技イベント「DEEP 120 IMPACT」(東京・後楽園ホール)に出場する。同団体デビュー戦で対戦経験のある泉武志(35=FIGHTER’S FLOW)とライト級王者挑戦者決定戦を行う。次のステージへ進むための重要な一戦を控えている野村に迫った。(取材・文=島田将斗)

プロ戦績は8戦6勝2敗。バックボーンである空手と出会ったのは3歳だが、名門道場ではなかった。週に1回程度の練習に飽き小学校高学年で一度辞め、中学時代はバレー部に所属した。「何か頑張りたい」の思いで高校は空手部に入部したが、素人同然だった。

「めちゃくちゃ無名高なんです。練習も週に3回ほどしかなくて……(笑)。1年生のときは、最初の大会で1回戦負けでした」

2年生時に大きな転機が訪れる。空手界での有名人がコーチに就任。県大会で優勝するまでになった。

「負けず嫌いだったんですよね。顧問の先生も『頑張ったらいける』って言ってくれて、自分ひとりだけ朝練をしていたんです。松山城の階段を走っていました。練習後には居残り練習でミットを持ってもらいました。バレーは真面目に取り組めなかった。初めて熱中できたのが空手だったんです」

高校最高実績は国体5位入賞。大学は帝京大にスポーツ推薦で入部した。いままで見てこなかったような強者たちに最初はおののいた。

「最初は活躍できるイメージがあまり湧きませんでした。大会に出るための部内の選考会があるんですけど、その選考会にすら出させてもらえない感じで……。それが悔しくて居残り練習をするようになりましたね」

その経験がいまに生きているという。

「足りないところを自分で練習するという気持ちはずっと心に残っています。いま、自分が一番ジムにいると思います。午後7時からの夜練習が終わったらひとりで打ち込みしたり、ミットをやったりして、午後11時ごろまでいます」

大学卒業後は空手を続けるため半年間、自衛隊に所属。その後は竿本樹生らとのつながりでBRAVEを知った。主宰の宮田和幸氏と出会い「朝、夜の練習、寝るところは保証する」の言葉でMMAの道へ進んだ。

猛者の集まるロータス世田谷で出稽古「やりたいことを相手に押し付けられるように」

普段の練習はBRAVEで行っているが、組みの強化のため、1年前からロータス世田谷で出稽古を行っている。

「ロータス世田谷さんに出稽古に行かせていただくようになって、スタンドの展開から組みにつなげたり、自分のやりたいことを相手に押し付けられるようになりましたね」

ロータス世田谷には日本MMA界の名だたる選手たちが集まっている。野村もそんな猛者(もさ)の胸を借りるため出稽古を選んだ。

「より強い選手をみんなが求めてロータスさんに集まっているのだと思います。どの階級でも組みのトップと言われる選手たちがいるんですよね。自分は青木真也さんだったり、イゴール・タナベさん、岩本さん、矢地祐介さんと練習していますね」

当初、青木との練習では心が折れかけていた。

「青木さんに関しては『衰えている』って言う人もいると思うんですけど、『じゃあやってみろよ』と思いますね。それぐらい衝撃を受けました。組みを分かっていたつもりだったのが恥ずかしいなと思うぐらい。それぐらい自信がなくなりました」

自分より大きな相手からテイクダウンを奪う青木を見て「なんでだろう」と不思議に思う日々。持っていた技術を捨てて思いきりよく組みついてみるところからやり直した。

「最近はシンプルな力じゃないなと分かってきました。『体のここを押さえているからこうなるんだ』みたいな感覚をやられながらも観察したり、休憩中に他の方と青木さんがやっているのを見て学んでいますね。付きっきりで教えてもらえるわけではないので、見よう見まねです」

出稽古を始めて1年。メキメキと実力が付いてきていることを実感している。

「BRAVEで練習をすると成長を実感します。自分で組んで勝負ができたりするんです。ロータスの中でも、それは感じていて『組みで勝負できる』と言ってもらえたりしていますね」

今回の一戦はDEEPの王座に挑むための「挑戦者決定戦」。しかしすでに王者の首を見据えていた。

「いまチャンピオンは江藤公洋さん。江藤さんはパンクラス王者の雑賀“ヤン坊”達也選手にRIZINの舞台でTKO勝ちをしています。日本で戦っているトップと言ってもいい選手に僕は昨年7月負けてしまったので、そこに勝てばみんなも認めてくれるのかなと思います」

泉との対戦はDEEP初参戦以来、2度目。その際には判定勝ちを収めていたが、前回とは全く違う自分になると豪語する。

「あのときはバンテージの問題とかでアップ時間が3分になってしまいました。興行としても大きくて火が出たり、ふわふわしてたんです。試合をした感じがあまりなくて(笑)。泉さんはRIZINに出ていたと思って大きく見積もりすぎていたなと。

下に見ているわけでは決してなくて、あのときとは見え方が違う。泉さんをちゃんと対戦相手の選手として冷静に見られています。試合の道筋も見えているので。江藤さんとやる上で良い踏み台にしようと。体も当時と今とでは全然違うと思います」

そんな野村の目標は「日本のライト級のトップとして世界と戦うこと」。

「『日本のライト級の一番は野村だ』と、みんなが口をそろえて言ってくれるぐらい圧倒的になってから世界で戦っていけるようになりたいです。今までやってきたことに対して納得できる試合にしたいです」島田将斗

© 株式会社Creative2