「SASUKE」は五輪正式種目に…バラエティー番組“フォーマット販売”はTV局の救世主となるか

「風雲!たけし城」ワールドプレミアの会見(2023年)/(C)日刊ゲンダイ

TBS系の視聴者参加型スポーツ番組「SASUKE」が、番組史上初となる世界大会「SASUKEワールドカップ2024」(8月21日放送)を開催することになり、話題となっている。

日本、アメリカ、ドイツ、フランス、オーストラリアの5カ国から選出された35人の精鋭が緑山スタジオに一堂に会し、世界一を決める戦いに挑むという。

「SASUKE」は1997年放送開始。いまや世界165の国と地域で放送され、25カ国以上で現地版が制作されている世界的な人気コンテンツだ。キー局編成関係者が解説する。

「TBSは30年以上前の『風雲!たけし城』から、こうした“フォーマット販売”に力を入れていて、『SASUKE』も、アメリカでは『Ninja Warrior』として制作され人気に火がつきました」

“フォーマット販売”とは、番組の企画やコンセプトを海外のテレビ局に販売するもの。総務省の「放送コンテンツの海外展開に関する現状分析」の報告書によれば、2020年度の放送コンテンツの海外販売数は3539本、海外輸出額は約571億円。この数字は年々増加傾向にあり、今後も拡大していく可能性が高いという。その内訳は、「番組放送権」「インターネット配信権」「商品化権」「番組フォーマット・リメーク権」などに分けられるが、テレビ局にとって、“フォーマット販売”はこの上なくオイシイものだという。

「『料理の鉄人』(フジテレビ系)はネットフリックスで、『¥マネーの虎』(日本テレビ系)は、欧米のテレビ局をはじめとする45カ国以上でリメーク版が制作されていますが、こちらは何もせずとも権利を販売するだけでお金になる。番組1回あたりは数十万~100万円程度と少額なのですが、再放送に関してもフィーは払われます。多くの国で制作されて、人気が出て長く続けば、何億、何十億という収入になる。バラエティー制作関係者にとって、フォーマット販売は、非常に有益なビジネスモデルなんです」(前出の編成関係者)

■吉本興業の「ドキュメンタル」を海外に販売

具体的にはどういうやりとりを経て番組フォーマットは売れるのか。

「年に一度、カンヌで『MIPCOM』というテレビ番組の見本市が開かれています。これはカンヌ国際映画祭のテレビ版のようなもので、テレビ番組の国際的な見本市。そこで、『MIPフォーマッツ』という部会があって、そこでバラエティー番組は売り買いされます」(バラエティー番組制作関係者)

さらに「SASUKE」に関しては、テレビ番組にとどまらず、2028年のロサンゼルス五輪で同番組を基にした「障害物レース」が採用されると報じられている。すでにTBSは撮影用のセットを貸し出してテスト大会を開催しているというから、今回の特番もその一環と言えそうだ。

「先日、活動停止中の松本人志の『ドキュメンタル』が、海外約20カ国にフォーマット販売していて、吉本興業は年間10億円以上儲かっていると報じられました。吉本興業もフォーマット販売に進出しているんです。日本のバラエティー番組は世界一のクオリティーといわれますが、『ポツンと一軒家』(テレビ朝日系)や『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京系)など、わかりやすいフォーマットで海外でも人気になりそうなコンテンツはまだまだたくさんありそうです」(前出の制作関係者)

“フォーマット販売”は広告費の激減や若者のテレビ離れで斜陽と言われるテレビ局の救世主となるかもしれない。

◇ ◇ ◇

フォーマット販売は、1発当たれば莫大な収益が上がる。●関連記事【もっと知る】「風雲!たけし城」アマプラ復活でTBSが弾くソロバン 10億円超フォーマット利用権でウハウハ…でももTBSの戦略を詳しく伝えている。

© 株式会社日刊現代