石丸伸二現象の古臭さ…NHK“新たな選挙戦”とヨイショも「強い言葉」「メディア攻撃」に既視感

都内を駆けずりまわり(C)日刊ゲンダイ

都知事選後のメディアは石丸伸二前安芸高田市長(41)の話題で持ち切り。政党の支持を受けず165万票を獲得。無党派層と10~30代の投票先はトップで「ネット世代が『切り抜き動画』を拡散して支持」との分析が目立つ。NHKは“石丸現象”“新たな選挙戦”と持ち上げたが、そこまで石丸は目新しいのか。

「恥を知れ」「政治屋の一掃」など強い言葉で、耳目を集める手法は「自民党をぶっ壊す」の小泉純一郎元首相とソックリ。既成政党やメディアを攻撃するスタイルは大阪府の橋下徹元知事を思い出す。YouTubeやTikTokなどの伝達手段が新しいだけで、言葉自体に新鮮味はない。

選挙戦も古典的だった。街頭演説は1回15分刻みで場所を変え、1日6~12カ所をこなす。私鉄沿線の小さな駅前や商店街、スーパーもコツコツ回り、顔と名前を売る。「つじ立ち」と呼ばれるオーソドックスな手法で、活動量は主要候補の中ではダントツ。昭和を引き継ぐ地道なドブ板選挙だった。

「選挙の基本を徹底させた一方で、都内のわが家の固定電話にも女性ボランティアが『石丸伸二をよろしくお願いします』とかけてきました。ドトール名誉会長ら経済人を味方につけ、豊富な資金力にモノを言わせた印象です」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)

■得票数は東国原英夫氏以下

今年72歳になる現職の小池知事に親子ほど年齢の離れた“青年”が挑む。この構図も既視感たっぷり。2009年の衆院選で民主党が自民重鎮の対立候補に女性の新顔をぶつけて次々と議席を奪い、政権交代を成し遂げた。性の違いはあれど、当時の「小沢ガールズ」戦略と相似形である。

「都内の無党派層は基本的に新しもの好き。約30年前の都知事選でタレントの青島幸男さんを当選させたように、昔から既成政党と一線を画す“改革派”を支持したがる。よくあるパターンに石丸氏もハマっただけとも言えます」(金子勝氏)

政権与党が独自候補を擁立できず、現職の圧倒的有利--今回のシチュエーションと酷似していたのが11年、東日本大震災直後の都知事選だ。投票率は57.86%と今回の60.62%より低かったが、4選した石原慎太郎元知事の261万票に対し、次点の東国原英夫氏は169万票を獲得。今回の石丸票を上回っていた。

東国原氏の今を思えば、石丸の健闘を変に持ち上げたりせず「そのまんま」を評価すべきだ。

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