日本はゴミ箱が少ないけれど イギリス在住経験のある日本人女性が感じた「世界に誇れる一面」とは

イギリスのバーミンガムで、市議会の予算削減により今後はゴミ収集の頻度が減る可能性があり、住民や事業者の懸念から、市中心部近くの路上にはリサイクル品やゴミがあふれている【写真:Getty Images】

日本では街中のゴミ箱が減少傾向にありますが、相変わらずの清潔さを保っています。逆にヨーロッパは街中にゴミ箱があるにもかかわらず、とくにきれいともいえない状況だと感じているのは、海外在住歴7年のMoyoさんです。ひょんなことからイギリスに移住、就職したMoyoさんが外国暮らしのリアルを綴るこの連載。34回目は、公共のゴミ箱についてです。

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日本のピッカピカの床や道路に感動

海外旅行や移住で外国へ行くと、日本が異常なほどきれいであることにまず気づく人も多いのではないでしょうか。トイレをはじめ、どんな場所でも床がピッカピカなのは当たり前。日本のトイレがとても衛生的であることは以前紹介しましたが、トイレに限らず、日本の公共の場所には、チリひとつ落ちていないのではというくらい、とても衛生的です。

その清潔さは、他国と比にもならないほど。やはりおそるべきものでもあります。日本の空港に着いた途端、そのピッカピカに磨かれたきれいな床に感激して、寝転んでしまった子どもの話を聞いたことがあります。

建物内だけでなく、一般の道路や道端を歩いていても、その清潔さを感じることがしばしば。ところどころにポイ捨て禁止の看板があるせいか、目立ったポイ捨てに遭遇することはまれかもしれません。

50メートルも開かずにゴミ箱が設置されているイギリス【写真:Moyo】

10メートル歩けばゴミに当たる

それとは正反対に、イギリスやフランスの道路はなかなかの曲者です。繁華街はもちろん、住宅街でも、10メートル歩くだけで足元に何度ゴミが当たるかわかりません。家庭ゴミから食べ歩きのポイ捨て、犬や馬のフン(騎馬警官が常時いるため)、段ボールなどのリサイクルアイテム、ガラス、家具まで、そのゴミの大きさも種類も実にさまざま。

なかでも一番困るのはガラスでしょうか。これでもかというくらい粉々になったガラスが、道路のあちこちに散らばっているのは日常茶飯事。ビール瓶やグラスをはじめ、車の窓が割られたガラスなどいろいろなタイプに遭遇します。

とくにパブ付近を歩くときや、自転車で移動しているときは注意が必要。外のテラスで飲みながら、あるいは敷地から勝手に出て、酔っ払った人たちがグラスを割るケースが多いからです。その破片があちこちに飛び散っていることが多いので、けがをしないように注意してください。ちなみに、酔っ払っているのか、意図的になのか、パブのグラスを家に持ち帰ってコレクションする強者もいます。

私はイギリスへ移住して間もない頃、そんな状況はつゆ知らず、夏場に薄いぺったんこサンダルを履いて歩いていたところ「薄いサンダルは危ないかも」と、職場の人からアドバイスされたのを鮮明に覚えています。というのも、上記のように粉々になったガラスがあちこちに落ちているから。それから少し厚底のサンダルを好んで買うようになったのは、言うまでもありません。

ゴミ箱が少ない日本vs街中の至るところにゴミ箱があるヨーロッパ

そんな清潔できれいな日本ですが、最近帰国してつくづく感じるのは、街中からゴミ箱が消えたこと。私が日本にいた頃から、テロなどの防犯対策や家庭ゴミなどの不法投棄対策もあり消え始めたのを感じていましたが、期間限定の場合もあったと記憶しています。

その後、コロナ禍や東京五輪などを経たからか、最近は余計に見当たらなくなりました。駅の自動販売機に備えつけであったゴミ箱すら少なくなり、驚きを隠せません。コンビニエンスストアも、外づけから店内備えつけタイプが普通になってしまいました。

これによって、ちょっとしたゴミが出たときにどこへ捨てたらいいのか本当に悩むほど。友人や家族から、ゴミを入れる専用の袋を持ち歩いて家に帰ってから捨てるという話も聞き、びっくりしました。いわゆる「ゴミの持ち帰り」という概念がますます強くなっていますよね。

では、イギリスやフランスではどうかというと、意外にも街のあちこちにゴミ箱があるのが普通だと思います。公園はもちろん、繁華街でも住宅街でも困らない程度に設置されていますし、チューブ(地下鉄)の駅やバス停など公共交通機関にもゴミ箱が設置されているので、ちょっとしたゴミをすぐに捨てられて便利です。犬のフン用ゴミ箱もよく見かけます。

それにもかかわらず、上記のように道路のあちこちにゴミが落ちている風景は、ゴミ箱があってもなくても同じ、結局は人々の意識の差なのかもしれません。サッカーのワールドカップ開催時、日本代表チームによるロッカールームの整理整頓や、サポーターのゴミ拾いなどが世界的なニュースになったのは記憶に新しいでしょう。自分の出したゴミに最後まで責任を持つ日本人の姿は、やはり世界に誇れる一面だと思います。

Moyo(モヨ)
新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。

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