【要注意】風呂上がりに仰天!! 雨の後じゃなくても川は増水する!? 「意外と知られていないダム放流」

川霧が立ち込める早朝の利根川本流。雨の影響を感じさせない穏やかな流れでした。群馬県沼田市(撮影:杉村航)

多くの地域が梅雨入りし、雨が降ったり止んだりが続いていますね。しかし、晴れた日には耐え難いほど厳しい暑さとなる時期でもあります。山や高原など標高の高いところや水辺が恋しくなりますね。川での釣りや沢登り、カヤック、ラフティングなどのウォーターアクティビティ、キャンプで川遊びをする人も多いでしょう。

そのため、水辺での事故が増える時期でもあります。まとまった雨が降れば川が増水することは想像がつきますし、あえて濁流の中に入っていく人はいないと思います。しかし、雨後に目の前の水量だけで判断していると痛い目に遭う可能性があります。水辺の危険は数多くありますが、(急激な)増水は、川で気にしておきたいリスクです。その原因の一つである“ダム放流”について説明します。

※ この記事は、川でのアクティビティを楽しむ上で知っておきたい注意点の一つを周知すること、悲しい事故を一件でも減らすことを目的としています。日常的に川に関わって活動している人には当然のことですが、起こりうる危険について、より広く伝えるための内容です。また、ダムの功罪についての記事ではありません。

■穏やかな流れが一変、濁流と化した川!

河原にはカワトンボの仲間、希少種のアオハダトンボも

7月に入って間もないある朝、熱帯夜をそのまま引きずったように早朝から蒸し暑い日でした。場所は群馬県沼田市を流れる利根川の本流です。付近は水辺環境に優れており、非常に豊かな生態系を育んでいます。希少な生物も生息しており、筆者は河畔林で水辺の生物の観察、撮影に勤しんでいました。

夜明けから3時間ほど、熱中症が心配になるほどの暑さですっかり参りました。そこで河原から離れ、近くの温泉に浸かることに。汗を流してスッキリした後、川を眺めに行ってみて仰天です!

濁流といっても過言ではないほどの流れが目の前にありました。川辺に建つ電光掲示板が“放流中”を知らせていたのもあり、ある程度の増水は予想していましたが、想像より遥かに水は増えており、茶色く濁った水が轟々と流れていました。もし流れの中にいたら容易に流されてしまう水量でしたし、報道で耳にする「取り残される」ような中洲も姿を消していました……。

ご存知の方も多いかもしれませんが、関東平野を流れ、流域面積日本一を誇るのが利根川です。その上流部である山間部には多くのダムがあります。梅雨入り前まではあまりにも雨が降らず、貯水率がかなり下がっていました。そのため、梅雨入り後のまとまった降雨はダムがしっかりと貯め込んでくれており、ダム放流前までは、まるで上流では雨が降っていなかったかのように澄んだ水が(わずかに水位は上がっていましたが)穏やかに流れていました。

筆者は日頃から渓流釣りをはじめ、川をフィールドとしており、天気予報だけでなく、降水量の履歴やダムの情報をつぶさにチェックするのが日課になっています。それでも、いざ放流後の増水を目の当たりにして、あらためてその危険を実感しました。

■晴れ続きでもダムの放流に注意!

ダムの存在意義を今一度確認してみましょう。まずは我々の生活を維持するための役割があります。発電や灌漑の用途や水道を含めた“水瓶”として、お世話になっていない人はいないほど、現代社会においてはなくてはならないものになっていますね。

さらにダムは、大量の雨が降った際に下流域の河川の氾濫を防ぐ役割も果たしています。梅雨時や台風などで激しい雨が降り続くと避難指示が出るような川の中流域に筆者は住んでおり、その度にひやひやしつつもダムのマネージメントに感謝している部分もあります。

ただし、雨後に無警戒に川へ近づくのは避けた方が賢明です。国土交通省の『川の防災情報』内には、以下のような記載があります。

・ダムは洪水を全て貯め込むためにあるものだ、と思いがちですがそれは誤りです。

・多くのダムの場合、大雨が降ってダムに流れ込む水の量が増えても、下流の川が溢れない程度の水量であればそのまま流すことになっています。しかし、下流の川が溢れてしまいそうな水量に増え続けると、ダムは溢れない水量に抑える役割をします。これが洪水調節です。

・ダムで水量を抑えるとき、抑えた分だけダムに水が貯まり貯水量が増加します。雨が止んで川の水が引き始めると、それまで貯め込んでいた水を加えながら流し、次の大雨に備えます。

・ダムは、大雨が降って一気に流れる危険な水を貯め込み、安全な水量に減らしながら時間を掛けてゆっくり流しています。

つまり、前述の通り、降水量(貯水量)次第で川が増水するケースがあるということです。ここに記述されている“安全な水量”とは、あくまでも流域で一般的な日常生活を送る上でのことでしょう。

■貯水率や放流量、ダムのサイトをチェック!

ダムのない川が希少なほど、日本の河川にはダムがあります。取水堰・堰堤もありますね。地図(地形図)を見れば、川のプロフィールがわかります。国土交通省のサイト以外にも最近では各地でダムの情報がチェックできるようなサイトが用意されています。水辺のアクティビティを楽しむのであれば、(上)流域での降水量を確認すると同時に貯水率や放流量なども気にする習慣をつけておくといいかもしれません。

流れを遮るのはダムなどの人工的なもの以外にもあります。倒木や土砂崩れなどで一時的に川の流れが堰き止められて“天然のダム”化しているときも。それが決壊して水や土砂が時間差で襲ってくるときもあります。平水なのに(普段は澄んでいる流れが)濁っている、濁り出した場合は要注意です。登山同様、上部(上流)への注意は常に怠らないように心がける必要がありますね。

完全に安全というのは、日常生活を含めて難しいですが、少しでもリスクを減らしたいものです。最新の情報の入手と現場での慎重な行動が必要ですね。

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