新球団で苦闘 ボールも打撃投手もマシンも…「ないない尽くし」からのスタートだった【くふうハヤテ内田順三打撃アドバイザーを直撃!】#前編

「くふうハヤテベンチャーズ静岡」の内田順三打撃アドバイザー(球団提供)

【くふうハヤテ内田順三打撃アドバイザーを直撃!】#前編

ファームのリーグ拡大に伴い、静岡県に初めてプロ野球の球団「くふうハヤテベンチャーズ静岡」が誕生した。球団増は現在の12球団制となった1958年以来66年ぶり。昨年11月のオーナー会議でオイシックス新潟アルビレックスBCとともに新規参入が承認された。母体がないところからのスタート。最初はないない尽くしだった。巨人と広島で37年間、打撃コーチなどを務め、くふうハヤテの打撃アドバイザーに就任した内田順三氏(76)に新球団の内情を聞いた。

◇ ◇ ◇

──静岡とつながりが?

「私は三島市生まれで東海大一高(現・東海大静岡翔洋)出身。元横浜監督の山下大輔GM(清水東)や元近鉄の赤堀元之監督(静岡)ら、静岡出身の野球人に、球団社長から声がかかりました。指導は1カ月のうち15日くらいです」

──新球団の環境は?

「キャンプに行ってもボールが足りなくて、NPBの球団と比べたら半分以下。打撃投手もいなくて、打撃練習の際はコーチ、野手、球団職員も打撃投手をやる。キャンプの時は打撃マシンもなかった。社長に『マシンは絶対に必要です』と頼み込んで、今は直球とカーブマシンはありますが……」

──他には?

「経費節減のため、開幕当初の名古屋遠征は、静岡から業者のバスで往復6時間の日帰りで宿泊費を浮かせていました。5月にチームバスを購入したことで、遠征先で宿泊できるようになりましたが、安いビジネスホテルで原則2人部屋です」

──新球団だけに経費節減は徹底している?

「公式戦の日は、購入したチームバスをJR清水駅から本拠地のちゅ~るスタジアム清水まで無料シャトルバスとして使用しているそうです。選手が乗る移動用のバスをファンに開放するのは珍しいですよね」

35歳の元ロッテ福田秀平は2人部屋

──目指すは勝利? それとも育成?

「チームは『育成、再生、勝利、そして地域密着』を掲げています。育成は今年のドラフトにかかる選手を1人でも多く輩出すること。これがメインですね。再生は退団した前NPBの選手をもう一度復帰させること。元ロッテの福田秀平は35歳で、最初の頃は寮の2人部屋で生活しながら頑張っていました」

──他にないものは?

「寮はあるけど、食堂がないから、みんな弁当を買って食べています。専用の室内練習場がなくてブルペンで打ったり……。ファームは育成の場だから、相手球団が練習できる室内がないのは困りますが……」

──参入1年目は5日現在、ウエスタン・リーグで20勝43敗4分けの最下位と苦戦中。

「オリックスの左腕・宮城大弥と3月の開幕戦で対戦した時は、5回を2安打で7三振を食らって無得点。二塁すら踏ませてもらえませんでした。うちは序盤から大量失点することがあっても、10点取られた先発投手が続投ということがある。他の球団だったら考えられません。ウエスタンは139試合の長丁場。選手の層が薄いから、投手をムダに使えないからです」 (つづく)

(聞き手=増田和史/日刊ゲンダイ)

◆内田順三(うちだ・じゅんぞう) 1947年9月10日、静岡県生まれ。東海大一高から駒大。13年間の現役生活はヤクルト、日本ハム、広島で主に外野手としてプレー。82年に現役引退。翌83年に指導者に転身。広島、巨人で打撃コーチ、二軍監督などを19年まで歴任し、多くのタイトルホルダーを育てた。20年から社会人野球のJR東日本の外部コーチ、昨年はロッテの臨時打撃コーチを務めた。

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