中国が日本周辺に頻繁にブイを設置する目的は?―仏メディア

仏国際放送局ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)中国語版は10日、中国が頻繁に日本周辺にブイを設置している理由について報じた。写真は中国海警。

仏国際放送局ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)中国語版は10日、中国が頻繁に日本周辺にブイを設置している理由について報じた。

記事は、中国の海洋調査船が先月、沖ノ鳥島周辺の日本の大陸棚に位置する公海上にブイを設置したことが確認されたと、日本政府が発表したことを紹介。林芳正官房長官が「目的や計画の詳細を示すことがないままブイを設置したことは遺憾」とし、透明性のある説明を中国側に求めたことを伝えた。

一方で、中国外交部の毛寧(マオ・ニン)報道官が「ブイは津波観測用であり、科学研究と公益を目的としたもので、国際的に通用するやり方で行っている。国連海洋法条約によると、公海はすべての国に開放されており、各国は公海で科学研究に従事する自由を有しており、日本側に干渉する権利はない」と主張したことを紹介した。

同報道官はまた、中国が昨年7月にも尖閣諸島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内にブイを設置したことについて問われると、「釣魚島(尖閣諸島)は中国固有の領土であり、周辺海域は中国の管轄海域。気象観測ブイを設置するのは合理的で合法的だ」と述べている。

RFIの記事は「毛氏の回答からはブイ設置に政治的・国際的な要因があることが見て取れる」と指摘。「6月に中国がブイを設置したのは沖ノ鳥島周辺で日本のEEZの外にあるが、日本政府はこの海域を、海底探査・開発などを行うことができる自国の大陸棚と考えている。海底には鉱物資源などが埋蔵されているとされ、日本側は中国がそうした海底資源の探査を行う恐れがあることから疑問を投げ掛けているのだ」と説明した。

その上で、国連大陸棚限界委員会が2012年4月27日に沖ノ鳥島を基点とする大陸棚限界延長を認める勧告を出した一方、中国側はこれに反対しているとし、中国の政治系雑誌「瞭望東方週刊」が掲載した中国国家海洋発展戦略研究所研究員らによる文章では「沖ノ鳥島は人工的な島であり、日本が海洋勢力図を広げるためにつくった『作品』だ」と批判されたほか、政府当局も同様の主張を繰り返しており、今回のブイ設置も日本側への「挑戦」であるとの見方を示した。

記事は、現在の情勢から見ると、世界各地にブイを設置することは中国にとってもかなり重要な戦略的意義を持っており、2019年に完成した中国最大のブイ作業船「向陽紅22号」も、中国の世界的な海洋戦略に応じたものであると分析。2015年に中国国務院新聞弁公室が発表した中国の海洋戦略は「近海防御型から近海防御と遠海護衛型の結合への転換を徐々に実現し、合成、多機能、高効率の海上作戦力システムを構築し、戦略的抑止と反撃、海上機動作戦、海上合同作戦、総合防御作戦、総合保障能力を高める」ことであるとした。

その上で、「海上係留ブイは現在、海洋監視の最も主要な手段だ」と言及。「水流の速度、波の高さ、海流の変化を監視するために重要な参考価値がある。ブイは大きければ大きいほど多くの探査設備を設置することができ、得られた情報は衛星を通じて中国に送信することができる。海洋警察船などの軍事行動の参考データとしては衛星と似た役割を持っているほか、気象学者からは『海洋上の気象衛星』とも呼ばれている」と指摘した。

また、過去に中国が日本近海にブイを設置した際、日本のマスメディアが「軍事目的の情報収集ではないか」「中国はブイを利用して船舶の航行に影響を及ぼす気象観測を行うとともに、水中音波を測定し、自衛隊の潜水艦特有の螺旋(らせん)音を収集・識別する可能性がある」などと指摘したことに言及。「中国が日本周辺にブイを設置する目的は複数あり、気象観測や資源探査の目的もあれば、政治・国際関係上の意図もある。中国の海洋戦略の中で重要な構成部分であると言える」と論じた。(翻訳・編集/北田)

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