新アニメ『ばいばい、アース』原作者・冲方丁と監督・西片康人のお気に入りキャラクターは?「キャラクターデザインが素晴らしい」

大人気作家・冲方丁のデビュー後第1作にして最高傑作のひとつである『ばいばい、アース』のアニメが2024年7月12日(金)23時30分よりWOWOWほかにて放送・配信を開始する。本作は獣人だけが住む不思議で神秘的な“異世界”が舞台。唯一の人間として生まれたラブラック=ベルが自分のルーツを探す旅に出る物語。entaxでは原作者の冲方丁と、アニメの監督を務める西片康人に独自取材。原作の話が生まれたきっかけから、“映像化不可能”と言われていた作品をアニメ化する上での苦労、2人のお気に入りのキャラクターまで教えてもらった。

◆『ばいばい、アース』が生まれたきっかけ

――アニメが決まったと聞いたときの気持ちを教えてください。
冲方 本当に決まったんだなと思って、うれしかったです。映像化はそんなに簡単に実現はしないんですけど、心の中ですごく期待はしていました。

――原作を書かれるときになぜこの内容を書くことになったのでしょうか。
冲方 デビューしたてだったので、(編集部から)女の子をメインに剣と魔法がテーマで、テーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム(テーブルトークRPG・西洋のゲーム的なファンタジー)が売れているからそういうイメージで書いてほしいと言われました。原稿用紙250枚ぐらいで書き終わってほしいと言われて、一応言うこと聞いたフリして全部守らないっていう(笑)。当時自分の中で、主題と世界観を構築する技量を身に付けなければならないと思っていたので、その2つを課題に作品を書いた結果、ファンタジックだけど、見たことがないようなものにしようとしました。

原作者・冲方丁

◆“映像化不可能”と言われていた作品をアニメ化する苦労

――西片監督の『ばいばい、アース』との出会いについて教えてください。
西片 最初にオファーをいただいたときに出会いました。原作を読んだときに、よくこんな重厚でアニメ化しにくいものを企画化したものだと(笑)。海外向けに考えていて、特に強い女性や自立した女性が、海外で人気だということで、『ばいばい、アース』がまさにそのラインにのっていると聞き、僕もファンタジーやアクション系の作品を(これまで)やってきたので、やらせてほしいということになりました。すごく大変な作品なのはわかっていたんですけど、この作品を自分でちゃんとこなせないと逃げたと思われるのも嫌だし、これは腰をすえてやらないとダメだなと、挑戦されたような気持ちになって、ぜひやらせてほしいという感じでした。

――映像化が難しいと言われていた中で、プレッシャーなどもありましたか?
西片 そうですね。内容が盛りだくさんで細かく幅広くどこの世界にもないようなものがたくさん盛り込まれていて、それを1つ1つ読み解いていきました。アニメ化するうえでどうしてもボリューム感は整理しないといけないので、その取捨選択を間違えないように、伏線や外しちゃいけない情報があるので、それを最後まできちんと読み込んだ上で、情報の整理を最初にしっかりとやらないといけないというのはありました。

監督・西片康人

――海外向けに、というお話もありましたが、どんな方に見てほしいなどはありますか?
冲方 拝見した限りどんな方であろうと、間口を広げて迎え入れることのできるアニメ作品だなと感心しました。日本のアニメーションにそんなに詳しくない方でも楽しめる作品になっているのではないかと思います。

◆原作者と監督が選ぶお気に入りキャラクター

――1番のお気に入りのキャラクターを教えてください。
冲方 主人公のベルの物語なので、ベルに注目しますけれど、今回のアニメーションですごい!うまい!と思ったのはキティの描き方ですね。まさか大きい長耳族(うさぎ)になると思わなかったので(笑)

西片 抱き抱えられるようなでっかい長耳族(うさぎ)ですね(笑)

冲方 最初にキャラクターデザインを拝見したときに、“きた!すごい!”と思いましたね。アニメーションにおいてお気に入りという点ではキティのキャラクターデザインは素晴らしいです。あと実は、準主人公とも言えるのがシェリーなんですよね。剣と魔法と言いつつ、剣と音楽の話なので、そういう意味でベルとシェリーという両極にいるダブル主人公みたいな話が始まるところが、シーンとしても個人的に気に入っています。

類まれなる歌声を持つ城の筆頭歌士・シェリー 

――西片監督はお気に入りのキャラクターはいますか?
西片 キティを取られちゃったので(笑)僕はベネディクティンですかね。最初は高慢ちきなキャラクターとして出てくるんですけど、お姉さんキャラとして、ベルを支えてくれるような印象深い関わり方をしてくれるキャラとして出てくるので、ベネディクティンは鮮烈なキャラだと思います。

【冲方丁(うぶかた とう)Profile】
『天地明察』、『マルドゥック・スクランブル』など数々の名作を執筆する小説家。さらに『攻殻機動隊 ARISE』、『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』、『PSYCHO-PASS サイコパス3』など様々な名作アニメの脚本も務めている。『ばいばい、アース』はデビュー後第1作として2000年に出版された。

【西片康人(にしかた やすひと)Profile】
『劇場版 七つの大罪 天空の囚われ人』、『オルタンシア・サーガ』などを担当したアニメ監督。

『ばいばい、アース』
2024年7月12日(金)23時30分よりWOWOWにて放送・配信開始
ほかBS局で放送、各配信プラットフォームにて配信

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