【インタビュー】超学生、新曲「Hazure」リリース「大事にしているのは“求めてもらえるものを供給し続けること”」

2024年はカバー動画を積極的に投稿し、春にリリースしたEP『MAR6LE』も好調のソロアーティスト・超学生が、新曲「Hazure」をデジタルリリースする。

辻村有記とTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也の共作曲である同曲は、TVアニメ『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』のOPテーマ。エッジーでありながらも浮遊感のあるサウンドデザイン、ダークかつキャッチーなサビのメロディの威力、台詞やラップのセクションなど、頭からラストまで刺激的な音楽体験ができる1曲に仕上がっている。

同曲について超学生に質問を投げかけていくと、楽曲への向き合い方から活動に対するスタンスにまで話が発展していった。J-POPシーン、アニソンシーンにも進出する超学生が、なぜいまインターネットツールをフル活用しているのか。そこには歌い手としての活動への純粋な情熱があった。

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◼︎この曲の世界の人になりきりました

──これまでも様々な作品の主題歌を担当している超学生さんですが、なろう系小説が原作のアニメの主題歌を担当するのは今回が初です。なろう系には馴染みがありましたか?

超学生:3年くらい前にラジオのお仕事で、なろう系小説を朗読する企画に参加させていただきました。それと同時期にSNSで「なろう系小説を書いている人はこういうところが大変」という投稿が流行っていたんです。「タイトルが長いのは、作品数が溢れ返りすぎてるからタイトルにどういう物語か書いておかないとクリックされないから」のような、なろう系小説ならではの戦略がタイムラインに流れてきて。僕ら歌い手もサムネイルや選曲を工夫したり、曲の長さとかも気にするので、ある意味親近感もありました。

──確かになろう系小説作家さんと歌い手さんには「インターネット上でいろんな人に読んでもらう、聴いてもらうために力を注いでいる」という共通点があります。

超学生:無料で読める、聴けるところ出身という意味でも同じだなって。だから勝手に“一緒に頑張っている人たち”と感じていました。そこから時を経て、なろう系小説原作のアニメのオープニングを歌わせていただくことになったので、不思議な縁だなと思っていますね。

──主題歌を担当するTVアニメ『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』にはどのような印象をお持ちになりましたか?

超学生:異世界転生ものは主人公が異世界で別の人に生まれ変わる流れがセオリーという印象があったんです。でも『ハズレ枠』は何の脈絡もなく、突然バスの中にいた生徒たちが全員異世界に召喚されて……転生というか転移なので、登場人物の存在も服も性格も全部そのままで。それで急に「倒してほしい人がいる」と告げられて、主人公が能力の低いスキルと判断されて“廃棄”枠に認定されるというテンポの良さも新鮮でしたし、集団で転移するのも珍しいなと思いました。あと映像も、クラシカルな手法を組み合わせて斬新なグラフィックを作っていますし、オープニング映像も「Hazure」のMVとしてそのまま投稿したいぐらいかっこいい動画でした。

──復讐に命を燃やす主人公が作品のOPテーマが超学生さんの元に届いたということは、超学生さんのボーカルは強い意志や下剋上精神を持った人物像と相性がいいということだとも思いました。

超学生:なるほど。僕が「歌ってみた」の投稿をたくさんするようになった頃とコロナ禍が重なっているのもあって、「家の中にずっといなきゃいけなくて鬱憤がたまってるから、超学生が叫ぶように歌ってくれるのは観ていて気持ちいい」とコメントをもらうことが多かったんです。『ハズレ枠』もたまりにたまったヘイトやフラストレーションを爆発させる気持ちよさを大事にしている印象があるので、超学生のボーカルにそういうイメージを持ってくださる人は多いのかもしれないですね。

──そういう人物像を求められる心境とは?

超学生:ありがたいですけど、うれしいっていうとちょっと変ですよね(笑)。僕自身は普段あまり怒ったりしないし、恨みつらみを持ったりもしないけれど、闇っぽい雰囲気とキラキラとした世界どっちが好きかと言われると、どちらかというと前者かなとも思うので。

──でお話いただいたように、歌っていてどうというよりは、表現が完成して世に出ることが超学生さんの喜びややりがいなのかもしれないですね。

超学生:そのインタビューでも話したとおり自分と遠いキャラクターのほうが歌いやすいですし、自分の感情より曲そのものを伝えることを第一にしているんです。だから怒りを表現した曲を歌うとスカッとする!ということはあんまりないけれど、完成した音源を聴くと自分の声だけど爽快な気持ちになるんですよね。

──「Hazure」は辻村有記さんとTHE ORAL CIGARETTESのギターボーカルでありソングライターの山中拓也さんの共作曲です。辻村さんとは「Fake Parade」以来二度目のタッグですね。辻村さんの作る曲にはどのような印象をお持ちでしょうか。

超学生:どこを切り取ってもサビみたいだなと思っています。日本の音楽においてサビはキャッチーであることが優先されることが多くて、作家さんの個性が出るのはAメロやBメロなんじゃないかと思うんです。でも辻村さんの作る曲は、ずっとサビみたいなのにずっと辻村さんのカラーが出ているなと「Fake Parade」で感じて。

──確かに「Fake Parade」も「Hazure」も、サビ以外がサビに向けての盛り上げ役ではなく、どのセクションも主役のような立ち回りだと思います。

超学生:「Hazure」はそこに山中さんのカラーが加わることで、より爆発力が増しているのかなと感じます。おふたりはJOGOというユニットで一緒に音楽制作をなさったりもしていて、THE ORAL CIGARETTESさんもアニメのテーマソングをたくさん担当なさっているので、辻村さんと山中さんのエッセンスが混ざり合うことで刺激的な楽曲になったんじゃないかなと思っていますね。ここがピークかと思いきや、もうひと盛り上がりする……がずっと続く曲なので。

──そうですね。前衛的なのに耳馴染みがいいことにも驚きました。

超学生:バーバパパさんの「ウ”ィ”エ”」みたいな重めのロシアンハードベースでありながらも、ステレオイメージが広いぶん1曲を通してメイン楽器がないサウンドメイクだなと思って。それが今おっしゃったような前衛的な感じにつながるのかもしれない。そのふんわりとした感じは、『ハズレ枠』で主人公が昔の自分と対峙するシーンを彷彿とさせるんですよね。あと辻村さんは左右からいろんなセリフや合いの手を入れるボーカルワークをすることも多いので、さらに夢の中みたいなイメージになっていくというか。

──歌、合いの手、ラップ、セリフといろんなボーカルが味わえるのも特徴的です。

超学生:「Hazure」のテイクは全部自宅で録音したので、曲自体が持っているパワーをできる限り汲み取ることに徹しましたね。「実際にディレクションをしてもらったらこう言われるんじゃないかな」と考えながらレコーディングしていきました。この曲のボーカルは特に、恥ずかしがって歌うと恥ずかしいテイクになって、振り切って歌うとかっこよくなるところが多いと思っていて。

──確かに歌うときに変に恥ずかしがってしまうと、曲の世界とミスマッチな仕上がりになってしまうかもしれません。

超学生:叫び声のテイクや途中に長セリフもあるし、笑い声も入る曲なので、この曲の世界の人になりきりました。そんなテイクを辻村さんセンスで構成してくださったのが、完成した音源ですね。だから「このタイミングでこのテイクを入れると効果的なんだ」とか「こう構成したらトラック数がこれだけで済むんだ」とかすごく勉強になって。MEGさんのミックスもマジックを見ているように鮮やかにまとめられていて、「Fake Parade」と同様に学びの多いレコーディングでした。

◼︎「歌ってみた」シーンがもっと盛り上がってほしい

──どうやら録音からリリースまで少し時間があったようですが、ご自身のヴォーカルへの変化は感じますか?

超学生:感じますね。「今ならここはこう歌うだろうな」と思うところがめちゃくちゃあります。でもあのときにしか出せなかった声も当然あるし、この粗削り感が「Hazure」や『ハズレ枠』という作品に合っていて、結果的にはいいんじゃないかなとは思っているんですけど……。つい最近ようやく、昔録った音源を聴いて「今ならもっとできるな」と思えるようになったんです。

──昨年9月くらいに「昔の音源のほうが良いテイクに聴こえる」とおっしゃっていましたよね。ようやくその域から脱したんですね。

超学生:今年に入ってから毎週ずっと投稿してきて、ちょっとずついろんなことにトライして積み重ねてきたことが実ってきたのかなと思います。それも毎週投稿を続けるためにスケジュールやお仕事を調整してくださっているレーベルさんやスタッフさんのおかげです。違うボイトレの先生にお世話になって、違う視点をたくさんいただいたのも訓練になりました。

──インターネット経由で発表すると、完成からリアクションをもらうまでのタイムラグがほとんどないので、リアルタイムで一つひとつ課題と向き合える。そこから解決の糸口を見つけられたのかもしれませんね。最近の超学生さんはかなり精力的な活動をしていますし。

超学生:毎週投稿を始めてから、聴いてくれる方が増えた気がするんです。「超学生が最近すげえインターネットに力を入れてるぞ」というのが伝わっているから、気にしてもらえたり聴いてもらえてるのかなと思っていて。恐縮なことに、最近よく活動者の方々から「なんであんなにSNSでいいねもらえるの?」「やっぱりYouTubeショートってやったほうがいいの?」みたいに聞いていただくことも増えて。皆さんインターネットでの動き方を試行錯誤してらっしゃるんですよね。

──最近は特に、SNSでのヒットが注目を集めるきっかけになっているので、そこを強化したいアーティストさんは多いのではないかと思います。

超学生:よく「どんな曲を歌うとバズる?」と聞かれるんですけど、それに対して正直に「僕は流行ってる曲を歌うぞというスタンスだと作業が進まないので、自分の好きな曲を歌ってます」と答えると、全然参考にならないじゃん!って顔をされることが多いです(笑)。でも最近SNSやYouTubeを見ていると「超学生の真似をしてくれたんだろうな」と感じる投稿もあってうれしいですね。真似してもらえるって「これはいいぞ」と思ってもらえているのと同義かなと思うので。

──そうですね。とはいえご自分でこつこつトライアンドエラーしながら得たノウハウを、そんなにいいとこ取りされてしまっていいんでしょうか。

超学生:「歌ってみた」シーンがもっと盛り上がってほしいんです。今が「歌ってみた」の歴史のなかで最高潮かと言われると、正直そうではないと思っていて。盛り上げのために僕ができることはできる限りやっていきたいし、僕も知りたいことやわからないことは山ほどあるので教えていただきたいし。僕からアドバイスできることがもしあるなら、それをどんどん共有していかないと不公平かなと思っているんです。

──シーン全体が盛り上がれば、どんどん発展が生まれますよね。時代が変わるごとに「歌ってみた」でできることも変わってくるでしょうし。

超学生:「ボカロ曲を人間が歌ったらどうなるの?」という需要と供給が一致して「歌ってみた」ムーブメントが起きたと思うんですけど、最近の音声合成ソフトウェアって人間みたいじゃないですか。だから特に最近は「超学生が歌ったらどうなるんだろう?」と求めてもらえるものを供給し続けることを大事にしています。「この人の声で聴かなくてもいいかな」とはならないようにしたいし、超学生の声だから聴きたいと思ってもらえる人が増えたら、原曲を作ったクリエイターさんにも還元できるんじゃないかなって。

──『ハズビン・ホテル』の「Poison」カヴァーを日本語詞バージョンと英語詞バージョンそれぞれでアップしているのも、クリエイティブな試みでしたよね。

超学生:「Poison」の心情を正確に歌いたかったのでまず日本語詞で歌って、作曲者の意図がより反映されている音でも歌いたかったので本家の英語詞でも歌いました。そういうことはこれまでやったことがなかったし、日本語版をアップしたときに「英語版も聴きたい」と言ってくださる方もたくさんいたんです。超学生よりすごい人はたくさんいるけれど、超学生みたいなことをして超学生くらいの数字を取れるのは超学生しかいないと思っているんです。でもそれって皆さんに言えることだと思うんですよね。

──そう思います。アーティストさんご自身がもともと持っているものをどう生かすか、どう成長させるか、どんなものが好きでそれを実現させるためにどんなことをするべきかを見極めるのが、成功やオリジナリティを追求する鍵なのかもしれないですね。

超学生:戦略的に活動をする人は、ものすごく頭が良くて大成功するか、1作だけ流行ってその後うまくいかないかのどちらかであることが多い印象があるんです。となると現状打破するための比較の対象は昔の自分しかないですよね……っていう話に結構毎回なりますね(笑)。

──失敗は成功の母とも言いますし、経験を重ね続けなければ打開策やいいものも生まれていかないですし。

超学生:ええ、そうですね。

──アーティストに限らず、それを自分で見つけて乗り越えていくことが、生きていくうえで大事なことかもしれないですね。さて、2024年も折り返し地点になりましたが、超学生さんは残り半年どうお過ごしになるのでしょうか?

超学生:どうなっちゃうんでしょうね? 今年の上半期も全然考えずにここまでやってきて半年経ってしまったので(笑)。いろんなお仕事ができるようにしつつ、「超学生がインターネットでいろいろやってるな?」と思っていただけるような動きもしていきたいですね。最近は「インターネットと仲良くなろう」が大きなテーマとしてあるので、リアルタイムで歌ったり喋ったりして、チャンネル登録してくれている人たちと仲良くなりたいなと思っています。そのためには、超学生のことがちょっと好きな人たちに向けて発信する必要があるのかなと思っていて。

──いわゆる“ライト層”と言われる人たちですか?

超学生:好き度が0から10まであるとして、僕は6~7ぐらいの人に向けていることが多いんです。全肯定してくれる10の人たちに耳を傾けるのは気持ちいいけれど、お互いwin-winな関係ではない気がして。

──確かに双方にいい影響を与えないかもしれませんね。

超学生:ちょうどいい温度で仲良くなれる人たちが増えてくれたらうれしいなと思っています。僕は小学生の時に思い描いた再生数やメジャーデビューという夢を叶えさせていただいたので、この楽しい時間が長く続いてほしくて。だからみんなに楽しんでもらえるものや、僕が好きなこと、やりたいことを発信していきたいし、そのためにスキルアップしていきたいんですよね。

取材・文◎沖さやこ
写真◎淵上裕太

「Hazure」

配信日:2024年7月5日(金)
配信URL:https://lnk.to/Hazure

歌:超学生
作詞・作曲:辻村有記/ 山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)
編曲:辻村有記

TVアニメ『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』

2024年7月4日24時59分よりTBSほかにて放送開始予定
公式HP:https://hazurewaku-anime.com
公式X:@hazurewaku_info

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