キャッチアップ接種って知ってる?子宮がんとHPVワクチンの関係性について佐賀先生にお伺いしました。

HPVワクチンについて、色々な意見を聞くけれど、どういったものなの?受けさせた方がいい?
そんな疑問について、二子玉川女性のクリニック院長 佐賀絵美先生にお答えいただきました。

HPVワクチンのこと、知っていますか?

HPVワクチンは、小学6年~高校1年生相当の女性への定期接種ワクチンです。
また、平成9年度~平成18年度生まれの女性(1997年4月2日~2007年4月1日生まれ)はご注意を!まもなくキャッチアップ接種(公費接種)が終了となります!

子宮頸がんとHPV
子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因であることがわかっています。
このウイルスは、ヒトにのみ感染できるウィルスであり、性的接触により子宮頸部に感染します。HPVは男性にも女性にも感染するありふれたウイルスであり、性交経験のある女性の過半数は、一生に一度は感染機会があるといわれています。HPVに感染しても、90%の人は免疫の力でウイルスが自然に排除されますが、10%の人はHPV感染が長期間持続します。このうち自然治癒しない一部の人は、異形成とよばれる前がん病変を経て、数年以上かけて子宮頸がんに進行します。

このHPVの感染を予防することにより子宮頸がんの発症を防ぐHPVワクチンが開発され、現在世界の70ヶ国以上において国のプログラムとして接種が行われています。
HPVは、突然変異によって姿を変えていくことがないウィルスですので、ワクチンによって誘導された免疫で感染予防できるウィルスなのです。
現行のHPVワクチンにより子宮頸がんの50~90%を予防できると考えられており、WHOはその有効性と安全性を確認し、性交渉を経験する前の10歳代前半への接種を推奨しています。欧米先進国や日本においても、ワクチン接種によりHPV感染率や前がん病変の頻度が、接種をしていない人に比べて減少することが明らかになっています。日本ではHPVワクチンは2009年12月に承認され、2013年4月より定期接種となっています。

HPVワクチンの種類
HPVには約200種類の“遺伝子タイプ”があり、その中で、子宮頸がんと関係の深いHPVタイプをハイリスクタイプといいます。このハイリスクタイプにはHPV16/18/31/33/35/45/52/58型などが挙げられます。
現在日本国内で定期接種とされているワクチンは2価・4価・9価ワクチンの3種類があります。(「価」とは、ワクチンに含まれるウイルスの種類の数を意味しています。)

2価ワクチン(サーバリックス®)はHPV16/18、4価ワクチン(ガーダシル®)はHPV16/18と尖圭コンジローマの原因となりうるHPV6/11、9価ワクチン(シルガード®9)はHPV16/18/31/33/45/52/58とハイリスクHPVの7種類をもカバーします。そしてこの9価ワクチンは2023年4月より公費接種となりました。

接種方法
HPVワクチンは1回のみの接種ではなく、ワクチンの種類や年齢によって、同じ種類のワクチンを合計2回から3回接種する必要があります。接種には一定の間隔を空ける必要があり、タイミングもワクチンの種類や年齢によって異なるため、どのワクチンを接種するかは、接種する医療機関で相談して決めましょう。そしてどのワクチンであっても全ての接種が終わるまでに約6ヶ月かかります。

出典:政府広報オンライン「子宮頸がんの予防効果が高い9価HPVワクチンが公費で接種可能に」
(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202306/1.html)

キャッチアップ接種

キャッチアップ接種とは、平成9年度生まれ~平成18年度生まれ(1997年4月2日~2007年4月1日生まれ)の女性で、積極的勧奨の差控えにより接種機会を逃した方に対して行う接種のことです。
このキャッチアップ接種世代が公費を使用し接種できるのは令和7年(2025年)3月末までです。先ほど述べたように、合計2回から3回の接種を終えるのには約6ヶ月かかるため、全ての接種を公費で行うためには、遅くとも第一回目の接種を令和6年9月中に行わなければなりません。(定期接種やキャッチアップ対象外の女性へは自費診療での接種となります。医療機関によって異なりますが、9価ワクチンの場合、接種1回の費用が約3万円という施設が多いでしょう。)
定期接種・キャッチアップ接種に関してわからない場合は、お住まいの市区町村や対象医療機関にお問い合わせください。

HPVワワクチンのリスク
HPVワクチン接種後には、接種部位の痛みや腫れ、赤みなどが起こることがあります。また、ごくまれですが、重い症状(呼吸困難や蕁麻疹などのアナフィラキシー、神経症状を伴うギランバレー症候群、頭痛・嘔吐・意識低下などの急性散在性脳脊髄炎など)が起こることがあります。
因果関係があるかどうかわからないものや、接種後短期間で回復した症状を含めて、HPVワクチン接種後に生じた症状として報告があったのは、接種1万人あたり、サーバリックス®またはガーダシル®では約9人、シルガード®9では約3人です。このうち、報告した医師や企業が重篤と判断した人は、接種1万人あたり、サーバリックス®またはガーダシル®では約5人、シルガード®9では約3人です。

このように極めてまれではありますが、万が一ワクチン接種後に医療機関での治療が必要になったり、生活に支障が出るような障害が残るなどの健康被害が生じた場合は、法律に基づく救済制度もあります。(詳しくはお住まいの市区町村の予防接種担当部門にお問い合わせください。)

HPVワクチンの接種の注意点
HPVワクチンは筋肉注射のため注射部位への痛みはあります。また、もともと注射や採血が苦手な方は、ワクチンを打つことに対する緊張によって痛みを増強して感じてしまうことがあります。接種直後に一時的に失神や立ちくらみを起こすこともありますので、接種後30分は安静にする方が良いでしょう。また接種当日は激しい運動は避けましょう。
接種後の体調不良を感じたら、接種した医療機関の医師に相談しましょう。

今回はHPVワクチンについて説明しました。
ワクチンによる予防と、子宮頸がん検診による早期発見・早期治療で、子宮頸がんで悩む女性が一人でも少なくなることを願います。

厚生労働省 ヒトパピローマウィルス感染症~子宮頸がんとHPVワクチン~(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000901220.pdf)
日本産科婦人科学会HP 子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために(https://www.jsog.or.jp/citizen/5765/)

[執筆者]

佐賀 絵美 先生
二子玉川女性のクリニック院長

[プロフィール]
杏林大学医学部医学科卒業
横浜市立市民病院、函館中央病院、板橋中央総合病院、東京品川病院等の総合病院に
勤務したのち2023年7月に二子玉川女性のクリニック開業。
日本産科婦人科学会専門医
母体保護法指定医師
日本産科婦人科遺伝診療学会認定医(周産期)
日本医師会認定産業医
日本医師会認定健康スポーツ医
日本抗加齢医学会専門医
コーヒーと格闘技が好きな2児の母です。

二子玉川女性のクリニック
https://www.futakotamagawa-josei.com

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