これがファミコンの最高峰?「芸術的ドット絵」「美麗グラフィック」で魅せた“神タイトル”に迫る

ファミコン版『グラディウスII』ゲーム画面 (C)KONAMI 1988

ゲームハードの性能が昔とは比較にならないほど向上し、最近のゲームのグラフィックの美しさは、それこそ実写と見間違えるほどです。しかし、30年以上も前に発売されたファミコンゲームのなかにも、ハード性能の限界に挑戦するような美麗グラフィックを実現させたタイトルがありました。

今回はそのなかでも個人的にファミコン最高峰のグラフィックだと感じた、懐かしきゲームソフトを紹介します。

■アーケード版とは違った魅力を表現した『グラディウスII』

アーケードゲームを代表する傑作シューティング『グラディウスII ーGOFERの野望-』(コナミ)のファミコン移植版が、『グラディウスII』(1988年発売)です。ファミコンで「4つのオプション」を実現させたことが話題になりましたが、同作はグラフィックの美しさも群を抜いていました。

ゲーム起動直後、画面いっぱいに描写された迫力満点の自機「ビックバイパー」のビジュアルを見ただけで、本作のグラフィックスのすごさが伝わってきます。そしてアーケード版の美しいステージの数々を、ファミコンの性能で表現したことにも驚かされました。

当然アーケード版の完全移植とはいかず、色の鮮やかさや細やかな表現力は到底かなうはずがありません。それにファミコンに移植するにあたって、やむを得ず変更された部分もありました。しかし、大量の水晶が浮かぶステージ3をきっちり再現した点については拍手を贈りたいです。

アーケード版の良い部分を活かしつつ、オリジナルステージやボスまでプラスし、うまくファミコンに落としこんだ傑作『グラディウスII』ですが、残念なことにファミコンの実機以外で遊ぶ手段がほとんどありません。現行のハードでも再度遊んでみたい一作です。

■絵画のようなゴシックホラー風グラフィックが美しい『悪魔城伝説』

グラフィックの美しいファミコンゲームといえば、コナミからもう一本『悪魔城伝説』(1989年発売)を挙げないわけにはいきません。城、森、墓場、時計台、幽霊船など、中世ヨーロッパがモチーフのステージを緻密に描いたグラフィックからは、絵画的な美しさが感じられる名作です。

もともと暗いイメージの世界観ではありますが、そのイメージを引き立てる“黒”の使い方が秀逸。そして個人的にシビれたのは、映画フィルムを連想させるようなプロローグの演出です。

ストーリー紹介の文章が流れるなか、ドラキュラ城や、そこに向かう主人公・ラルフの姿が挿絵のように差し込まれていました。その絵の構図や雰囲気が作品のイメージにとてもマッチしていて、何度見てもほれぼれします。

さらに、そこから始まるオープニングシーンでは、廃墟となった教会で祈りを捧げたラルフが出陣する姿を精細なドット絵で表現されています。雷鳴が轟く演出や、マントを翻すアニメーションからは荘厳さを感じました。

ちなみに、エンディングでは崩壊するドラキュラ城を崖の上から見つめるラルフの姿を見ることができ、こちらのグラフィックも必見です。

ステージ内の演出も素晴らしく、例えば森のエリアでは暗闇のなかに光る眼が現れ、そこからフクロウが飛び出してきたり、回転する巨大な歯車が単なる背景ではなく、乗ることのできるギミックだったりと、凝ったグラフィックがしっかりゲームと融合しています。

この『悪魔城伝説』も、先述した『グラディウスII』もそうですが、80年代後半のコナミのファミコンゲームのグラフィックは、他のメーカーと比べて頭一つ抜けていたのではないかと思います。

■ハイレベルな映画風演出が光る『忍者龍剣伝III』

テクモの『忍者龍剣伝』シリーズの三作目、『忍者龍剣伝III ~黄泉の箱舟~』(1991年発売)は、ファミコンでのシリーズ最終作になります。それだけにゲーム内容、グラフィックともにファミコンとは思えないほど洗練されていました。

同作はファミコン版『キャプテン翼』から始まった「テクモシアター」と呼ばれる、映画的な視覚効果を追求したゲームとして製作。章と章の間に挿入されるムービーシーンは、まさに映画を見ているような臨場感があり、ストーリーに没入させられます。

また、各ステージごとに美しく細部まで描かれた背景グラフィックは「圧巻」の一言で、多重スクロールも多用されていました。とくに高速で足元を流れる雲は、高高度を飛行する次元戦艦での戦いに緊張感をもたらします。そのファミコンのゲームらしからぬ繊細な表現に、誰もが目を奪われたのではないでしょうか。

個人的には「走る」「張りつく」「ぶら下がる」「ジャンプ」など、リュウ・ハヤブサの滑らかなモーションも秀逸に感じました。

■美少女とメカをアニメ風に描ききった『メタルスレイダーグローリー』

最後の一本は、ファミコンにおける最高峰のグラフィックスを語るうえで、どうしても外せないタイトルである『メタルスレイダーグローリー』(ハル研究所/1991年発売)です。主人公の手元に届いたメタルスレイダー(ロボット)の謎を巡るアドベンチャーゲームで、8メガビットの大容量ROMをフルに使ったキャラクター描写やアニメーションがぎっしり詰まった作品でした。

「緻密に描かれた美少女」と「動きまくるロボット」のどちらが見どころかは悩むところですが、個人的には、やはりロボットの描写に軍配が上がります。

駐機された多数のメタルスレイダーをエレベーターから見下ろすシーンや、カタパルトからメタルスレイダーが発進するシーン、そして多彩な武器を使って僚機とともに戦うバトルシーンなど、そのどれもが素晴らしいアニメーションに仕上がっています。

もちろんロボアニメ好きの心をくすぐる場面ばかりで、演出まで含めて、ここまでグラフィックとアニメシーンに魅せられたファミコンソフトは記憶にないレベル。メカに興味のある人には、ぜひ一度見てもらいたい作品です。

ファミコンの頃はブラウン管のテレビ画面に映ることを前提に、ドットのにじみまで考慮してグラフィックを作っていたそうです。現在の液晶モニターに映したものを見ても、当時と同じ感動は味わえないのかもしれませんね。

そして、もちろん今回紹介したタイトル以外にも、美麗なグラフィックが売りだったファミコンゲームはたくさんあります。皆さんが、グラフィック面でファミコンの頂点だと感じたタイトルは何だったでしょうか。

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