イングランドをファイナルの舞台に導いた殊勲のワトキンス、「あれほど完璧なシュートを撃ったことはない」と自画自賛!

現地時間7月10日に行なわれたEURO2024準決勝で、イングランドはオランダを2-1で下し、2大会連続での決勝進出を果たしている。

ドルトムントでの一戦、「スリーライオンズ」は開始7分でシャビ・シモンズの素晴らしいミドルによって3試合連続で先制を許したものの、18分にハリー・ケインがシュートを放った際にデンゼル・ドゥムフリースのファウルを受けたとしてVAR検証の末にPKを獲得し、ケイン自身がゴール左隅に決めて同点。そのままスコアが動かずに迎えた後半アディショナルタイム(AT)、角度のない位置でボールを受けたオリー・ワトキンスが反転から右足を一閃、低い弾道のシュートは左隅に突き刺さった。

スロバキア戦では後半ATにジュード・ベリンガムのオーバーヘッドで追いついて延長戦で勝ち越し、スイスには終盤にブカヨ・サカの美弾で追いついてPK戦で勝利と、ノックアストステージに入ってから劇的な展開が続いていたが、今回もそれは再現され、サッカーの母国は大きな歓喜に包まれることとなった。
デンマーク戦以来となる今季2試合目の出場で殊勲者となったワトキンス。81分にケインとの交代でピッチに立った28歳は、コール・パーマーのパスを受けての決勝ゴールを振り返り、「ハーフタイムに僕はコールに対し、『もし2人とも出場したら、君が僕に決定的なパスを出すんだ』と話していて、それが現実となった。こんなチャンスは滅多にないから、僕は貪欲になる必要があった。これまで、あれほど完璧なシュートを撃ったことはないと思う。とても特別な瞬間だ」と喜びを表わした。

また、一躍母国のヒーローとなったアストン・ビラ所属のFWは、「(プロデビューした)エクセター・シティ時代には、イングランド代表としてEUROでゴールを挙げるなんて、考えたこともなかった。夢を見ることはできるけど、僕は現実主義者だから、当時はトップチームに昇格することだけに集中していた。ここまで来るのに一生懸命努力してきた。だから、今は全ての瞬間を楽しみたい」と感慨深げに語っている。

今大会の大部分をベンチで過ごしていることについては、「正直、少しイライラしていた。ベンチにいるのは好きじゃないし、自分のキャリアにおいて最高のシーズンを過ごしてきたから」と明かしたワトキンス。そんな28歳に対し、ガレス・サウスゲイト監督は「オリーが決定的な瞬間を生み出してくれたことで、我々はさらに30分間戦うことを免れた。彼にとっても特別な試合となり、本当に嬉しい」と賛辞を贈った。 采配が的中した形となった指揮官はまた、2016年からの歩みを振り返って「この7年間で信じられないほどの夜を過ごした。私がこの仕事に就いている唯一の理由は、イングランドに成功をもたらすためだ。今回、国外での大会でチームを決勝に導けたことを、非常に誇りに思う」と語り、スペインとの決勝に向けては「今大会で最高のチームと我々は対峙する。準備時間はスペインより1日短いが、我々は優勝するために勝ち上がってきた」と意気込みを示した。

長い歴史においてようやく3度目のメジャートーナメント決勝に到達したイングランドが、自国開催だった1966年ワールドカップ以来2つ目のタイトル獲得を実現できるかどうかは非常に興味深いところだが、英国の日刊紙『Evening Standard』は、すでにスペインとの最終決戦の展望を行ない、勝敗も予想している。

この記事の中で同メディアは、「このカードは今後しばらく、メジャートーナメントの終盤戦ではお馴染みのものになるかもしれない。スペインは若く、組織的でエネルギッシュなチームであり、才能に溢れ、かつ冷酷な一面も持っている。その点は、幾つかの不調な試合を除けば、イングランドにも同じことが言える」と、ともに優れたチーム同士であることを強調した上で、以下のように試合について言及した。
「もし、この試合が堅苦しい消耗戦になるなら、イングランドが有利だろう。一方、スペインが攻撃のためのスペースを与えられるなら、イングランドには大きな脅威となる。試合は延長戦までもつれ込む可能性もある。どちらが勝つかを予想するのは非常に難しいが……イングランドがPK戦の末に勝利を飾るだろう」

かつては彼らにとって“鬼門”であり、前回大会の決勝でも涙を飲んだ11メートルの勝負での決着を予想するあたりに、今大会ここまでの戦いでイングランドが大きな自信を得てきたこと、そしてそんな自国代表チームに同メディアも厚い信頼と期待を寄せていることが窺える。7月14日のベルリン決戦で新たな歴史の1ページがめくられるか要注目である。

構成●THE DIGEST編集部

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