くまモンからバリィさん、ぐんまちゃんまで―。数々の人気キャラクターを送り出してきた「ゆるキャラグランプリ」が4日、岩手県滝沢市での大会を終え、10年の歴史に幕を下ろした。最後の栄冠を手にしたのは同県陸前高田市の「たかたのゆめちゃん」。全国の自治体が、町おこしなどを目的に日本一の座をかけ競ってきた。最近はブームが一服し、エントリー数が減っていた。(47NEWS編集部)
2011年の第1回大会で優勝した熊本県の「くまモン」。ぽっちゃりした体形に、とぼけた表情が愛らしく、たちまち人気者になった。東日本大震災があったこの年、多くの人に癒やしをもたらした。人気は香港や台湾にも広がった。くまモンを利用した商品の売上高は、11年からの累計で8100億円を超えた。
くまモンと激しく競った愛媛県今治市の「バリィさん」。翌12年大会で勝利し、市の知名度向上に貢献した。くまモンやバリィさんの成功を受け、大会への関心も高まった。参加したゆるキャラは、11年の349体から、栃木県佐野市の「さのまる」がグランプリに輝いた13年には1580体に増加した。
その後も増え続け、群馬県の「ぐんまちゃん」が優勝した2014年大会には1699体がエントリー。15年大会では、最多の1727体が参加し、浜松市の「出世大名家康くん」が頂点に立った。
自治体同士のPR合戦は次第に激しさを増していった。国政選挙さながら、各地には「選挙事務所」が開設され、市長自ら「選対本部長」を名乗る自治体まで出た。
選挙戦が過熱する中、問題になったのが「組織票」だ。フリーメールアドレスで大量に得たIDを使い、一人の職員が一日に何度も投票する事例が相次いだ。
18年には、暫定1~3位だったゆるキャラについて、ネット投票の一部が不正と見なされ得票が取り消される事態も起きた。1位だった三重県四日市市の「こにゅうどうくん」は3位に転落、4位だった埼玉県志木市のカパルがこの年の王者になった。
過熱ぶりに、職員や市民からは「そこまでやる必要があるのか」と冷めた見方も出た。関西地方のある自治体は、16年に初めてエントリーしたものの、その後は参加していない。担当者は「地域での活動に専念したかった」と振り返った。
ゆるキャラが乱立する一方、ブームは一服。キャラクターのエントリー数は18年に1千体を下回り、20年は691体にとどまった。
最後の王者となった「たかたのゆめちゃん」は東日本大震災後の12年1月に誕生。バッグに入った夢や幸せを広く届ける妖精、という設定だ。復興をアピールし、地域を盛り上げようと6年ぶりにエントリー。28万0017票を獲得した。
主催者は「第1回開催から10年が経過し、一つの役割を終えた」と話している。