接待を伴う飲食店で利用客が意識をなくし、クレジットカードなどを無断使用される被害が、横浜市中区の福富町地区で多発している。狙われるのは酔客で、同地区の複数店舗で発生。神奈川県警は手口が共有されている可能性があるとみる。伊勢佐木署がプロジェクトチームをつくって捜査や抑止対策に努めるが、「昏睡(こんすい)強盗」としての立件は容易でない。
「身に覚えのないクレジットカード決済がある」。50代の男性が伊勢佐木署を訪れてそう被害を相談したのは7月のこと。署によると、この日の未明に福富町地区の飲食店で2回のカード決済の記録があり、支払額は計65万円に上っていた。同地区の飲食店に入って飲酒した記憶はあったが、その後のことはよく覚えていなかった。
署が決済記録のあった飲食店を捜査したところ、無許可営業の疑いが浮上。8月に風営法違反容疑で中国籍の経営者を逮捕した。
ただ「本丸」と位置付ける「昏睡強盗」での立件に関して署幹部は「ハードルが高い」と話す。
一つには、被害者が記憶をなくした経緯が判然としないことがある。この男性も深酔いした状態で、女に路上で声を掛けられ、この店に誘い込まれたとみられる。店内で2、3杯飲んだ後の記憶がないという。
酩酊(めいてい)して記憶をなくした理由が店内で提供された飲み物によるものなのかを確認するのは困難で、県警によると、同様の被害に遭った人から睡眠作用のある成分が検出された事例はないという。