8日の「母の日」に欠かせないカーネーションの出荷が、県内トップの生産量を誇る秦野市内で大詰めを迎えている。新型コロナの感染拡大による需要減には歯止めが掛かったが、今年はロシアのウクライナ侵攻で原油価格が高騰し、ハウス内の暖房費が例年の3割増に。苦境は続くが、生産者は「花に罪はない。母親への感謝の思いをカーネーションに託してほしい」と前を向いている。
同市羽根の今井園芸では、ピンクや白、黄色など15色を3棟の温室で栽培している。摘み取り作業は早朝から行われ、ハサミを使って1本ずつ丁寧に切っていく。園主の今井勲さん(78)は「夕方には出荷する。世間は連休だけど、こちらは休み無しだよ」と笑う。
一昨年から続くコロナ禍でイベントの中止が相次ぎ、一次は伸び悩んだ出荷量も回復傾向にあるという。しかし、今度はロシアのウクライナ侵攻による原油価格高騰の影響を受けた。先手を打とうと例年よりも1カ月早く生育させたが、ハウス内の暖房費は昨年よりも3割増になった。「価格転嫁はしたいけど、できない。赤字にはならないけど、利益が減るのはきついよね」と胸の内を明かす。
段ボールに詰められたカーネーションは県内だけでなく北海道や関西など全国に出荷される。今井さんは「目で見て楽しんでもらい、飾って喜ばれる花を育るのが自分の役目。花には罪がないので、贈る側も受け取る側にも笑顔になってもらいたい」と話す。