運用方法の厳格化が進む「白ナンバー」の社用車を巡り、深刻な課題が横たわっている。道交法施行規則の改正により、10月に各事業所での配備が義務化されるアルコール検知器の供給不足だ。需要の急拡大に半導体不足が重なって生産体制が追いつかず、異業種から参入した神奈川県内の企業からは困惑の声が上がっている。
「製品を受注しても、10月までに納入できないのが実情です」
今年に入ってアルコール検知器業界に参入した制服メーカー、金原(きんぱら)(横浜市保土ケ谷区)の稲垣信和さんはため息をつく。
稲垣さんは半年ほど前、取引先の官公庁とやりとりする中で、道交法施行規則が段階的に改正されると知った。対象の事業所では4月以降、運転者に対する目視などでのアルコールチェックが義務付けられ、10月からは検知器での確認が必須になるとの内容だ。
最新の交通安全白書によれば、適用対象の事業所数は全国で34万に迫る。「ルールの変更を把握していない企業もあり、何か力になれないかと考えた」と金原正和会長。顧客のつてで検知器メーカー3社とつながり、製品を取り扱う事業に乗り出した。
だが、既に企業からの引き合いが強まっていた上、半導体不足による部品供給網の目詰まりが重なり、検知器の在庫切れが常態化。金原と連携するサンコーテクノ(千葉県)でも、3製品のうち2製品が欠品となっている。品薄状態の解消時期は見通せていない。
業界各社でつくるアルコール検知器協議会の担当者は「対象の事業所数が膨大なため、未配備のまま10月を迎える企業が出てくるだろう」と明かす。一つの事業所で複数の検知器を使うケースもあり、必要な機器の数は見当がつかないという。