ウインブルドンの英雄マリーがダブルスに終止符!「プレーを続けたいのに、それができないのがつらい」<SMASH>

度重なるケガと闘ってきた元世界王者のアンディ・マリー(イギリス/現113位)が、現地7月4日に行なわれたテニス四大大会「ウインブルドン」の男子ダブルス1回戦に兄のジェイミー・マリー(イギリス/複元世界1位)とのペアで登場。リンキー・ヒジカタ/ジョン・ピアース(オーストラリア)を相手に粘りを見せるも、6-7 (6)、4-6で敗れ、2回戦進出とはならなかった。

今夏限りでの現役引退を示唆している37歳のマリー。そのためシングルスで過去2度の優勝を誇るウインブルドンは今年が最後となることが濃厚だ。

その引退ビジョンにも狂いが生じてしまった。6月中旬に出場した「シンチ選手権」(ATP500/芝)の2回戦を背中の負傷により途中棄権すると、同月末には脊椎囊胞(のうほう)の摘出手術を決行。しかしその甲斐もむなしく出場を予定していたウインブルドンのシングルスは無念の欠場を余儀なくされた。

それでも一緒にコートに立つことを夢見てきた兄とのダブルスは、状態が懸念されていた中で出場を決意。特別にセンターコートで組まれたヒジカタ/ピアースとの試合は、マリー組が接戦に持ち込むもタイブレークを落としてセットダウン。第2セットでは計2度のブレークを許して初戦敗退となった。

試合後にはマリーの功績を称える形で特別セレモニーが挙行された。初めにマリーのキャリアを振り返るビデオが公開されたのだが、そこには“ビッグ4”として長年共にしのぎを削ってきたノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ロジャー・フェデラー氏(スイス)、さらには元世界女王のセレナ・ウィリアムズ(アメリカ)も出演。

かけがえのない仲間たちからメッセージを送られた不屈の男の頬を熱い涙が伝うと、約1分間にわたって会場から大きな拍手と声援が巻き起こった。
その後、セレモニーに登場したイギリス女子テニス界のレジェンド、スー・バーカー氏(元3位/68歳)のインタビューに応じたマリーは引退という苦渋の決断を下さなければならない無念の思いをこう口にした。

「プレーを続けたいのに、それができないのがつらい。今はフィジカル的にかなり厳しいし、これまでに負ったケガはどれも軽いものではなかった。だけどいつまでもプレーはしたい。僕はこのスポーツ(テニス)が大好きだ。それは僕にとても多くのものを与えてくれたし、残りの人生で生かせるようなたくさんの教訓を得ることもできた。プレーをやめたくないから余計につらい」

そしてセレモニー終了後にマリーはジョコビッチやホルガー・ルネ(デンマーク)、ダニエル・エバンス(イギリス)ら現役選手に加え、ジョン・マッケンロー氏(アメリカ)やレイトン・ヒューイット氏(オーストラリア)といった往年のレジェンドたちと熱くハグ。温かい雰囲気に包まれたまま、センターコートを後にした。

だがまだこれで終わりではない。というのもマリーは同郷のニューヒロイン、エマ・ラドゥカヌ(イギリス/現135位)とのペアで混合ダブルスにも出場するからだ。そちらが本当のラストマッチとなるだけに、再び大きな注目が集まりそうだ。

文●中村光佑

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