実は生まれつき聞こえない片耳、乗り越えて現在は経営者の顔も 日本育ちの韓国人ラウンドガールの挑戦人生

ラウンドガールとしては異色の経歴を歩んできたそよん【写真:山口比佐夫】

異色の経歴を歩む「思い立ったら行動するんです」

格闘技イベント「K-1 World Max 2024」(7月7日、東京・国立代々木競技場第二体育館)に先立ち、大会でラウンドガールを務める「K-1 ガールズ 2024」のメンバー9人が先日発表された。ENCOUNTではメンバー最年長のそよんを取材し、29歳ながら初めてラウンドガールに挑戦する彼女の素顔に迫った。(取材・文=浜村祐仁)

ラウンドガールという華やかな職業とはギャップを感じるほど、洗練された大人の雰囲気に圧倒された。今季、「K-1 ガールズ 2024」に新たに加入したそよんはみずからの手で人生を切り開き続けている。

「しっかりと計画を練ってから行動するにしても、走りながらやってみるにしても、結局結果はほとんど変わらないんじゃないかって実感してるんです。思い立ったら行動するのが一番なんだなって思います」

日本生まれ、日本育ちの韓国人タレント。その行動力で、学生時代はライブ配信などの活動を行いながら介護職の資格も取得。大卒後は、IT系企業の一般職を経験した後に本格的にアイドル活動をスタートさせるなど芸能界では異色の経歴を持つ。

「親がもともと介護の仕事をしていて、私自身ももっと福祉について学びたいと思ったのが資格を取ろうとしたきっかけです。母からは、やりがいや楽しさなどポジティブな部分をたくさん聞かされていたので、介護職についてマイナスなイメージはまったくなかったです」

また、2022年には自らがオーナーとなり、湯島にコンセプトカフェをオープンするなど経営者としての才能も発揮している。

「アイドルを始めたのは、ライブ配信でリスナーとコミュニケーションを取る時間が楽しくてそれが忘れられなかったからです。私自身はもともと自分の知名度を上げたいというよりは、ファンの人のためにという気持ちで芸能をやっていました。ファンの人が喜んでくれるものはなんだろうと考えてコンカフェを始めました」

しかし、経営の経験も知識もなくオープン当初は苦労が絶えなかったという。

「経験がまったくなかったので、勉強しながらって感じでした。経営は正直大変です。特に人を指導することには本当に苦労しました。嫌われることが怖かったんです。でも気づきました。それじゃお店潰れるなって」。野鳥のシマエナガをモチーフとした店舗は現在では20人もの従業員を抱え、上り調子だ。

「シマエナガって、集団で生きる協調性の強い鳥なんですよね。そこが私の性格と似てるんです。個人で何かをするというよりは、私もファンの人と相談しながら企画を作ったりしていたので、親近感を感じました」

生まれつきの難聴も自身のアイデンティティと語る【写真:山口比佐夫】

生まれつきの難聴も告白「コンプレックスはなくなった」

順風満帆な人生を歩んでいるかのように見えるそよんだが、実は生まれつき耳が不自由だという。

「SNSなどでは公表していないのですが、生まれつきこっち(片耳)しか聞こえないんです」。その影響でこれまでも多くの苦労を重ねてきた。

「自分の体が一番なので納得させているところもありますが、アイドル活動も途中で卒業せざるを得なくなり、もっと大きなステージに立ってみたかったと心残りに思います。ミュージックビデオとかも作ってみたかったです。私生活でも音がうるさい環境だと聞こえづらかったりだとか、(会話が聞き取れずに)無視していると勘違いされたりしたこともあります。苦しいなって思うときもありました」

しかし、さまざまな経験を経て考え方の変化も実感しているそうだ。

「最近では仕事を一緒にしている人にもこのことを言うようにしていて、それで遠ざけられるということもなかった。コンプレックスだと思っていた部分が、自分のアイデンティティなんだと感じられるようになったことが昔と変わった部分です」

そして、次なる挑戦の場に選んだのが、「K-1 ガールズ」だ。これまで格闘技との関わりはあまりなかったというが、「ラウンドガールという仕事はファンにも認められてきてすごくいいなと思う。もっと勉強して魅力を伝えられるようになりたいです」と意気込んでいる。「人が殴り合って流血するシーンなんか生でみると最初は衝撃だったんですが、最近では格闘技の面白さがわかってきました」

多方面での活躍の裏では常にファンとの距離感を大切にし、一歩ずつ道のりを歩いてきたそよん。七夕の日に歴史ある代々木の地で新たなスタートを切る。浜村祐仁

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